鬼怒川水害まさかの三坂 8

 

破堤の進行状況

 

Jan., 21, 2020

 

 越水・決壊する堤防上で撮影された29枚の写真、ならびに対岸のCCTV画像、および堤内の住宅から撮影された動画を順にみてきました。このページでは、破堤後の画像を見ます。

 


 

 13:27の写真21から16:19の写真29までは、いずれも破堤区間の上流側のB区間の天端上から、下流方向を撮影したものです。おそらく同一人である「国土交通省職員」が撮影したもののようです。破堤が進行中の3時間近くでたった9枚というのは少ないのですが、実際にこれだけしか撮影していないのかもしれません。

 つぎのような説明がついています。

・川裏から川表に削れて、この現象が上流へ広がって来た。

・微震動が有り、先端に近づけなかった。

・法面の草が堤防天端に向かって倒れており、上流も越水したと感じた。

・水は、けやきの木を巻いて下流側へ流れていた。 

 2点目以外は、舌足らずでよくわからない説明ですが、以下で触れることにします。

 


21(13:27a

 破堤が始まったとされる12:52から1時間35分後です。前ページで見た住民撮影のVTRがおそらく13:00ころで、D区間は越水もしないまま大部分残っていましたが、それから30分くらいで、20m近く上流側へと破堤が波及したわけです。堤内側法面がすこし残っています(このあと詳述)。

 天端の堤内側が沈んでいるところをみると、天端の直下まで洗掘が進んだようです。

 「川裏から川表に削れて、この現象が上流へ広がって来た。」という証言は、C区間では川裏側法面が越水のために先に洗掘されていたことを言いたかったのかもしれません。


 住宅1の百日紅は、前ページの写真17(右に再掲)でみたとおり、川裏側法面が垂直になるまで洗掘された区間(C区間)にあります。ところが、この写真21を見ると、百日紅のところには法面が残っているように見えるのです。車庫は氾濫水で押し流されて傾いていますが、まさか百日紅が立ったまま移動するとも考えられません。

 写真17では、川裏側法面の下部が塀と生垣の陰になっていて見えませんし、写真21は、斜面になっている法面を斜め見下ろしているので、たいへんわかりにくいのです。おそらく、C区間下流端の川裏側法面は下の方は残っていて、これとD区間の法面の最後に残った上流端が、この写真21で見えているのです。

 この部分は、写真23では流失しています。



22(13:27b

 21の直後に、下流方向に1〜2m移動して撮影したものでしょう。C区間の堤外側法面を5m以上くだったところが河道の水面になっています。このC区間では、13:00ころまでは越水していたわけですから、突然おおきく水位が下がったということです。

 D区間の堤体があったあたりはすでに大きく抉られ、洪水が流れ下って水面が下がり、波立っています。その先の堤内側では逆に洪水が盛り上がっています。



23(13:34

 写真22から7分後ということですが、D区間上流端の残っていた川裏側法面は流失し、さらにC区間でもB区間近くの天端アスファルトが折損崩落するところまで進んでいます。

 ケヤキの周囲は氾濫水が取り巻いています。「水は、けやきの木を巻いて下流側へ流れていた」という証言はこうした状況のことでしょう。

 B区間は、下流側3分の1くらいは川裏側法面が法肩から法面中段にあるケヤキの根元あたりまでは洗掘されました。しかし、この時点では冠水しているのでわからないのですが、堤体基底部まで全部流失したわけではありません。

 上流側3分の2くらいの川裏側法面は、4ページで見た写真9(12:04)のように越水していたのですが、このとおり結局洗掘されずに残っています。



24(13:45

 写真23からの11分間で、アスファルト天端のうち、C区間でまだ残っていた部分とB区間のケヤキのあたりが折損崩落しました。

 川表側法面の短い草が天端アスファルトの方にしなだれています。「法面の草が堤防天端に向かって倒れており、上流も越水したと感じた」というのは、このことのようです。「上流」というのは、遥か彼方なのではなく、B区間のことでしょう。



25(14:16

 24から31分間経過し、B区間のケヤキあたりの川表側法面が洗掘されました。

 天端アスファルトに、24と同じ枝が写っていますから、天端の崩落は進んでいないようです。

 23以降、アスファルト上に足跡が写っています。撮影者のものでしょう。越水していた際に氾濫水が泥を残していったのです。



26(13:46

 25から30分間経過し、川表側の法面の洗掘がさらに進行し、それにより天端アスファルトも川表側から崩落が進行しています。(白字以外の書き込みは国交省によるもの)



27(15:40a

 26から54分後です。右は流されてきた樹木です。

 B区間では、川表側法面の洗掘がさらに進行し、天端アスファルトの崩落も進んでいます。



28(15:40b

 27の直後です。破堤断面に近づいたのではなく、ズームレンズを望遠側にして撮影したようです。

 アスファルトの切り口の向こうに見えているのは、崩れ落ちつつあるケヤキ付近の川裏側法面の土と草です。

 向こうには下流側の破堤断面が見えています。天端のアスファルトが白く見えています。その左右はヘアピンカーブの手前、堤防が幅広になっているところです。



29(16:19

 28から39分後です。(書き込みは国交省によるもの)

 B区間の川表側法面の洗掘と天端アスファルトの崩落も少し進んでいますが、堤体の洗掘が著しいのは下流側です。28からの39分間で数十mも破堤が進んだようで、ヘアピンカーブ部分が完全に消滅し、堤内側の樹木も流失しました。

 2mの赤白棒は、ひと目盛20cmです。天端アスファルト幅は3mです。



 堤防上で越水前に住民が、越水後は国交省職員と委託企業従業員が撮影した29枚の検討を終わります。次ページは、再び対岸からのCCTV画像に戻ります。