下流優先論9  2019年水害の隠蔽                    (May 22, 2021)

 

Ⅳ 痕跡水位改竄の痕跡

4時間前の最高水位時には今より70cm高かった、と指差す住民

守谷市大山新田、2019年10月13日14:58

 

 

 

 開示されたSUVRP001.pdf、SUVRP002.pdf、SUVRP003.pdfは、新星コンサルタントが下館河川事務所に納入した文書そのものではなく、開示の直前に作り直されたpdfである。端的にいうと改竄されたものである。

 その証拠となるのは、Ⅱに示したとおり、pdfの作成日(Creation date)である。繰り返しになるが、以下の通りのpdfの基本的構造から判明する。pdfは、作成日(日時)がデジタルファイルの属性として埋め込まれていて、pdf閲覧アプリケーションプログラムで表示することができる。すなわち、windows上では、acrobat reader の property プロパティー・コマンドによる文書の属性表示により、MacOS 上では、preview の inspector インスペクター・コマンドによる文書の属性表示により、それぞれ作成日が明示される。顔貌の墨消し(いわゆる黒塗り)をするなど、加筆・加工を施した場合には、それをおこなった日時は、更新日(Modification date)として記録されるのであり、作成日(Creation date)が書き換えられることはない。pdfは改竄を防止するために文書の作成日を明示し、それ自体の書き換えができないようになっているのである。逆に言えば、本件pdfのように、納入された日付から何か月も後の、しかも開示直前の日付が作成日(Creation date)である場合には、原本ではなく、原本を装っているが改変されたまったく別のpdfであることが明らかである。

 以上のことは、外形的なものであるから、極端に言えば、内容はまったく同じなのにpdfを新たに作成した可能性もありうる(無意味であり、非現実的だが)。しかしながら、本件pdfは、外形的にみて原本とは異なった、新たなものとして生成されただけでなく、内容上の改変・改竄が施されたものであった。それはたんなる憶測ではなく、その証拠がある。

 文書に改変・改竄をほどこすのは、一見容易であるように思えるが、じつは極めて困難である。本件文書のように、3000ページ近い大部のものに、改変・改竄をほどこすと、内容上の矛盾を必ず来たす。真実を述べる分には内容上の矛盾を来すことはないが、虚偽を交えると、当然だが内容上の矛盾は不可避である。本件文書の改変・改竄は、洪水の痕跡 trace を隠蔽するためにおこなわれたのであるが、改変・改竄の痕跡 trace を残したのである。その痕跡は「想定」ではなく、「明確」である。

 次は、SUVRP001.pdfのp.29である。新星コンサルタントが下館河川事務所から委託をうけ実施し、報告するに至った調査について概略を説明するなかで、「痕跡調査」の成果物を例示したものである。

 

 本件報告書における中心的内容は、定期的に実施される流量観測・横断測量・深浅測量などであるが、そのほか、不定期の調査としての「高水流観」すなわち、具体的には2019年10月13日をピークとする台風19号による洪水(=高水)の際の流量観測が含まれる。その「高水流観」に「伴い」実施したのが、本件「痕跡水位調査」であり、その成果物として、「痕跡平面図」と「痕跡縦断図」を作成したとして、それぞれを例示したのである。

 「図2-16」は、痕跡縦断図のうち、5枚目の図である。それを、痕跡縦断図の例としてこの1枚を引用してみせたのである。書類の記入例として「山田一郎」などの架空人物を記入したものが示されることがあるが、まさかこんなところで架空河川の架空痕跡縦断図を載せるような無意味なことをするはずもない。また過去の痕跡縦断図を載せることもないから、当然、このあと報告書で全部を掲載する実際の成果物の一部を掲載したのである。

 どうして5枚目であって、1枚目でないのかというと、つまるところ、この5枚目より前の図では、痕跡水位が一覧表でいう「不採用」、地点写真で言う「想定」の地点が連続的に存在していて、縦断図上で痕跡水位を示す赤破線がないのが目立つので、その不体裁を見せないためだろう。(改竄前の)報告書の作成・提出時点ですでに、縦断図の1枚目から4枚目までには、見本として示すのを憚るような赤破線のない連続的な欠測区間があったということである。

 「図2-15」でも同様である。すなわち、1枚目の平面図(「平面図3」)には、痕跡水位の測定地点を結ぶ青実線がまったくないので、まさかそんなものを見本として掲げるわけにはいかないと思い、一部区間(3.00kより下流)を除いて青実線が描かれた2枚目の平面図(「平面図4」)を例示したのだろう。(改竄前の)報告書の作成・提出時点ですでに、7.00kから下流はおそらく全て欠測にしてあったということである。

 図2-16の痕跡縦断図に戻る。ここで例示された5枚目の図と、本文のp.171に示された図は、当然、同じものでなければならない。ところが別物である。次に、SUVRP001.pdfのp.29の痕跡水位縦断図の見本(図2-16)のうち右岸の一部を拡大したものと、SUVRP001.pdfのp.171の痕跡水位縦断図の5枚目のうち右岸の同じ区間を拡大したものとを引用する。

 いずれも文字が極端に小さく、とりわけp.29の痕跡水位縦断図の見本(図2-16)は、もとの図が小さいので解像度がいっそう低く、文字・数字は読み取り困難だが、SUVRP001.pdfのp.171と対照すればかろうじて地点がわかる。

(なお、国生〔こっしょう〕は、2015年鬼怒川水害の2主要氾濫地点のひとつ若宮戸〔わかみやど〕の対岸の鬼怒川右岸の常総市最北端の大字で、かつての茨城県岡田郡国生村であり、長塚節〔ながつか・たかし、小説『土』の作者〕の出身地である。)

 下左は、SUVRP001.pdfのp.29の痕跡水位縦断図の見本(図2-16)のうち、右岸の一部(国生排水樋管・25.00k地点から27.00kまで)を拡大したものである。赤破線は途切れていない。下右が、SUVRP001.pdfのp.171の痕跡水位縦断図のうち、右岸の一部(国生排水樋管・25.00k地点から27.00kまで)を拡大したものである。赤破線が途切れている。

 


 

 改変された、この区間の地点写真をみてみる。SUVRP002.pdfのp.617のR25.75kからR26.25kまでの地点写真と、SUVRP002.pdfのp.618の鎌庭第二排水樋管から鎌庭堰上流までの地点写真を引用する。

 

 SUVRP001.pdfのp.29の痕跡水位縦断図の見本(図2-16)と、SUVRP001.pdfのp.171の痕跡水位縦断図との相違点は、見本のp.29では26.00k、26.25k、26.50kの「ほぼ明確」の赤丸付きを含め全区間に赤破線が描かれているのに対し、本文のp.171では25.50kから26.50kまでの8地点が痕跡高を示す赤破線のない空白となっていることである。なお、それに対応して、平面図(SUVRP001.pdfのp.151からp.152まで)ではその区間が痕跡高を示す青実線のない空白となっている。

 2つの縦断図には共通の脱漏がある。下に、抜粋した区間の2つの縦断図と平面図の対応を示した。その「鎌庭堰下流」と「鎌庭堰上流」の2地点が縦断図では抜け落ちているのである。一覧表には欄があるし、平面図には痕跡高測定地点の赤丸が打たれているのだが、縦断図では抜け落ちている。

 

 

 p.29の見本では全区間に赤破線が描かれていて痕跡高データが示されているのに、本文の方のp.171では差し渡し1kmにわたって(記載漏れ地点を含め)10箇所で痕跡水位が欠測となっている。報告書を作成・提出する段階では、当然同一内容だったはずである。すなわち、縦断図全11ページを作成し終えたあとで、そこから1ページを抜き出して、見本としてp.29に掲げたのである。それがなぜこの5ページ目だったかというと、前述のとおり、赤破線の空白のない最初のページがこれだったからである。ところが、一旦完成した報告書の一部を書き換える必要が生じ、このp.171の図を改変して差し替えたのである。ところが、このp.171の図が、見本としてp.29にも掲載されていることを知らなかったために、p.29には、p.171の改変前の図がそのまま残ることになったのである。

 逆はありえない。すなわち、先にデータ欠損のある平面図が作られてp.171に割り付けられたあとで、データ欠損のない平面図を作ることになって見本ページのp.29だけ差し替えて、本文のp.171の方の差し替えを忘れた、などということは考えにくい。どちらが蓋然性が高いかは、明らかである。

 どうせ改竄するのであれば、一部だけ改竄するのではなく、関係部分を全部改竄すればよいものを、どうしてこういう迂闊なことをしたのかは、明らかだ。要するに、データの点検や報告書の編集などの実務に慣れていない者が大慌てで実施したからである。改竄前の報告書の作成は、複数の担当者が時間をかけて慎重におこなったに違いなく、本人はもちろん事後のチェック担当者が、全体の構成をきびしく検査したはずである。細部の誤記やいまさら修正のしようもない多少の瑕疵は残るかもしれないが(というのも、修正すれば改竄になってしまう)、ページの順序違い、しかも距離の順に配列する図面の入れ違いなど、誰もが最初に気づくような、表面的・外形的なミスの見逃しなど到底ありえないだろう。

 先に指摘したとおり、平面図と縦断図の双方で、ページの順番が入れ違っていることを考えると、報告書の全構成について内容を把握していないのはもちろん、それ以前にpdf文書の作成や編集(併合・分割・挿入・削除など)の操作に習熟していない不慣れな者があせって作業したに違いない。測量会社の業務についての習熟以前の、初歩的なコンピュータ操作上の能力欠如である。いったんできあがったpdfの特定ページを差し替えるには、まず1ページを削除し、新たに1ページを挿入するのであるが、新ページをドラッグしてサムネイル欄にドロップするときに、次ページの前に入れたつもりが、後ろに落としてしまったのだろう。エクセル(表計算ソフトウェア)での「行挿入」もそうであるが、挿入する際には前に(before)付加するか、後ろに(after)付加するかで結果は大違いだから慎重にやらなければならないのであるが、これなど不慣れな者がよくしでかす失敗類型のひとつである。当然ながら、そういう未熟者であれば、一旦出来上がったpdfに編集(併合・分割・挿入・削除など)をほどこせば、元のpdfの作成日(Creation date)が変わってしまうという、pdf作成のイロハなど知らないから、改竄したpdfを、改竄の証拠付きで開示してしまうのである。pdfにする前のもとのファイルで入れ替えしたものを、再度pdfに変換したのかもしれないが、その場合にも同じことをしたのだろう。

 改変をほどこしたことによって、もうひとつ決定的な自家撞着が生じている。それぞれの測定地点において撮影された地点写真とそれに付された「痕跡精度」を併記したのが次ページの表である。

 地点写真と縦断図と平面図は、本来なら次のように対応することになっていた。

 

 縦断図の赤破線    = 平面図の青実線 = 地点写真の「痕跡精度」が「明確」

 縦断図の赤破線に赤丸 = 平面図の青実線 = 地点写真の「痕跡精度」が「ほぼ明確」

 縦断図の空白(注)  = 平面図の空白  = 地点写真の「痕跡精度」が「想定」

 

   (注:凡例では赤破線に赤三角であるが、赤破線を引かず空白にしている。)

 

 

 地点写真に併記された「痕跡精度」の「想定」は、「縦断測量観測手簿及び計算簿」に記録された測量データを不採用とし、痕跡水位データを空白にしてしまう唯一の理由であるはずだった。まさに切り札(trump)だったのだ。ところが、赤文字にした3地点で、地点写真に併記された「痕跡精度」が「明確」であるにもかかわらず、一覧表で空白、縦断図で空白、平面図で空白となっているのである。

 もはやデータ改竄は明々白々である。

 これもさきほどの縦断図の改変と同じことである。まず作成された一覧表・縦断図・平面図には、測量によって得られた数値・記号が記入されていたのであり、それに対応する地点写真の「痕跡精度」は当然「明確」だった。それをあとになって数値・記号を全部削除したのであるが、それに対応する「痕跡精度」の「明確」を「想定」に書き換えなければならないのに、考えが及ばず、忘れてしまったのである。

 逆はありえない。まず作成された一覧表・縦断図・平面図の数値・記号は空白であり、それに対応する地点写真の「痕跡精度」は「想定」だったのを、あとになって「痕跡精度」の「想定」を「明確」に書き換えたのに、それに対応する数値・記号を書き込むのをうっかり忘れてしまった、ということはあり得ない。

 縦断図の見本ページの差し替え忘れと、「痕跡精度」の書き換え忘れ、この2つは無関係のミスなのではなく、痕跡水位データの抹殺のための改変をするにあたっての2箇所での対応作業の懈怠にすぎない。