3 濫立する中高一貫教育校

 

 

 

 

 

 

 

 大井川が独断で決定する中高一貫教育校設置

 新知事大井川のもとで策定された最初の県総合計画である「茨城県総合計画~『新しい茨城』への挑戦~ 2018-2021」に、「中高一貫教育校」についての記述がある。

 

「生徒一人ひとりの個性をより重視した教育の実現を目指すため、6年間の計画的・継続的な指導が可能である中高一貫教育校の設置など、本県の目指す人財育成の方向に沿った特色ある学校づくりを推進します。」32

 

 この「総合計画」は、2018(平成30)年2月5日から10月30日までの、「茨城県総合計画審議会」による審議を経て作成されたもので33、その中に「Ⅲ「新しい人材育成」として県教育委員会の担当する領域についての計画方針が含まれている。

 そして、2019(令和1)年〔年度としては平成31年度〕6月25日の「茨城県総合教育会議」において、次のとおりの文書が示され、実質的審議討論などいっさいないままこの部分がそのまま「茨城県教育大綱」とされた。会議において示された文書には、つぎのとおり記されている。

 

 茨城県総合計画は,県政運営の指針であり,その教育,学術及び文化に関する部分は,本県の教育,学術及び文化の振興に関する総合的な施策の目標や基本方針を定めるものであることから,茨城県総合計画の教育,学術及び文化に関する部分をもって〔茨城県教育〕大綱に代えることとします。 

 

 つまるところ、茨城県においては、「県教育大綱」は、知事を長とする知事部局が全部作成し、知事が主催する「県総合教育会議」において、県教育長と県教育委員が即座にそのまま受け入れる、ということである。他の都道府県や市町村であれば、多少なりとも実質的な討論検討がなされるのであるが、茨城県においては、示された原案を時間をかけて審議する体裁を整えることもしていない。部局としての茨城県教育委員会(その事務局としての茨城県教育庁)は、完全に茨城県知事の統制管理下に入っているのである。

 議事録は概要ではなく逐語録なので、その場の雰囲気を伺い知ることができるのだが、5人の教育委員は、まるで知事に面会して要望意見を奉る陳情団のごとくに振る舞う。曲がりなりにも教育行政をつかさどる独立した組織なのだという矜持はないようだ。その卑屈な態度はじつに痛ましく、見るに忍びない。本稿4ページで見た大井川の発言は、教育委員のひとりが県内の生徒40人だけを対象とする英語の講習について、もう少し人数を増やせないかと言ったことに対する反論だった。希望者全員に広げろと言ったわけでももないのに、非礼ともいえる大井川の高圧的な反論で、教育委員は黙らされてしまった。

 この2019年6月25日の「茨城県総合教育会議」では、茨城県教育行政における大井川の一人天下ぶりを印象付けるできごとが、もうひとつあった。県教育長の柴原宏一こういちがまったく発言していないのである。中高一貫教育校について県外からの越境入学はみとめているのかと訊かれ、「中等教育学校は認めていません。高校については,県同士で協定を結んで認めています」と答えたのが唯一の発声で、あとはただのひとことも発言していない。教育長はこれまでのように教育委員会によって任命される事務方のトップなのではない。知事に直接任命され教育庁を率いる重要な役職なのに、年に一度の「総合教育会議」で一言も発言しないのである。相当の覚悟のもとでの無言の抗議だったのだろう。柴原は、この2019年度末、3年の任期のうち1年を残して県教育長を辞した。こうして大井川は、茨城県教育委員会・教育庁における、もっとも優れた「人財」を失うことになった。茨城県立高校の教諭から校長・高校教育課長・教育次長などを歴任した柴原の後任には、知事部局の産業戦略部長だった小泉元伸が教育長に据えられた。しかし、これも2年で交代する34。大井川は、知事の忠実な僕となるべく橋本昌が整えておいてくれた教育長を、鴻毛のごとくに軽く扱うのである。

 2021(令和3)年12月24日の「茨城県総合教育会議」では、知事部局の政策企画部政策調整課が作成した「茨城県教育大綱の改訂について」という文書が示され、2022年4月をもって「茨城県総合計画~『新しい茨城』への挑戦~ 2018-2021」から「第2次茨城県総合計画『新しい茨城』への挑戦 2022-2025」35に移行することになるので、「引き続き、次期・茨城県総合計画の『教育、学術及び文化』に関する部分をもって大綱に代えることにしたいと考えます」として、その該当部分を配布した36。「総合教育会議」においては、教育委員会・教育長はたんに決定事項の伝達対象として扱われている。

 そして、2022(令和4)年度の「県総合教育会議」の閉会にあたり、大井川は次のとおり述べた。

 

 それでは、皆様より御意見を承りましたところで、本日の議事はここまでにしたいと思います。本日の議論を、今後の県の教育行政に活かしてまいりますので、今後とも御指導のほど、よろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。37

 

 県知事が県教育委員と教育長の意見を聴取し、「今後の県の教育行政に活かしてまいります」と言うのである。教育行政を執行するのは知事で、教育委員会はその知事に意見を言ったりお願いしたりするだけの存在になっている。芝居で役者が他人の台詞を喋ってしまったかと思うような、完全な主客転倒である。このような大井川による教育行政の独善的支配は、改正地教行法によっても許されるものではない。38

 

 教育委員会ではなく、知事が中高一貫教育校の対象校と開校年次を決定

 大井川は、2019(平成31)年2月20日に中高一貫教育校設置の具体的内容を、突如記者発表した39。県教育委員会が「県立高校改革プラン」の「基本プラン」を発表したのと同日に、県教育長柴原宏一ではなく、県知事が突然、「基本プラン」の一部の具体化としての「実施プランⅠ期」のうち、既設校の改編によって新たに開校する中高一貫教育校の具体的校名を発表したのである。

 改正地教行法は、知事が主宰し、教育長と教育委員が参加する「総合教育会議」において教育に関する大綱を決めるものとしたのである。たとえば「中高一貫教育校」についても、前述(15頁)の内容にとどまるのであり、いつ、どこに何校設置するのか、それは新設なのか既設校の改変なのか、等々の具体的内容までを含むものではない。しかし、記者発表資料には開設時期・校名・形態、そして対象となる学級数まで細かく記してある。これは、「大綱」の範囲を完全に逸脱するものである。1年前の「医学コース」設置の突然の発表と同様の、地教行法違反の越権行為であるが、こうした違法行為が、茨城県の教育行政を支配する大井川の拙速独断的行動の常態になってしまっている。翌年以降の新型コロナ蔓延を受けての「休校措置」の発表なども同様である。

 一挙に10校の校名を発表しただけでも衝撃的であるが、とりわけ先行した東京都で不適当な仕組みだったと総括され、縮小されることになった「併設型」を9校において採用するなど(勝田高校のみ「中等教育学校」)、杜撰な内容である。

 大井川は、特段の検討考察をするわけではなく、ただ他都道府県でやっていることを表面的に模倣しているのである。したがって、中高一貫教育校設置の趣旨目的としては、「豊かな人間性と起業家精神を兼ね備えた地域のリーダー・世界に飛び立つ人財を育成」と、空疎で無意味な語が示されるのみで、説得力のあるものは何も示されてはいない。3年後、10校開校した2022(令和4)年度の「茨城県総合教育会議」で、大井川は次のように述べた。

 

(大井川) それから、能力の高い方々の才能をさらに伸ばすということ、私も全く同感でございます。かつての製造業中心の工業化社会のときのように、皆が画一的な仕事をこなすことを期待されるボトムアップ社会と違って、今はもうデジタル化の世界で、高い才能を1人でも2人でも生み出しやすいことの方が、社会にとって大きなメリットを生む時代になってきているものと思いますので、そういう才能を摘むのではなくて、伸ばしてあげることが非常に重要だと思っています。中高一貫という環境はですね、そういうことを手助けできるように、伸び伸びと、どんどん興味をもって先に進めるような環境を作っていただけるような学校にしていけたらなと思っています〔……〕。教育の「全てが公平でなければならない」という考え方を打ち破るものとして、スタートさせていただいたのですが、このような考え方も踏まえながら、是非、教育改革を前に進めていきたいと思います。40

 

 製造業中心の工業化社会は「皆が画一的な仕事」をしている「ボトムアップ社会」で、それに対して「デジタル化の社会」は「能力の高い方々」による〝トップダウン社会〟なのだと言うようだ。ICT41推進論者の金太郎飴的画一的発言である。工業について何ひとつわかっていないからこういう単純なことが言えるのだ。大井川の台詞は、本稿5ページで見た2019年度の発言とほとんど同趣旨である。何年経っても同じことを言って「画一的」なのは、大井川である。

 憲法上の基本原理ともいうべき「公平」を否定する問題発言であり、もしこれが大臣や国会議員、中央省庁の幹部の発言であればただちに報道され、発言取り消しくらいでは済まず、即座に辞任解職になるものである。長谷川千恵子の発言であれば、翌日2社が報道するくらいのことにはなるが、知事の憲法否定発言は聞き流されてしまう。大井川の発言は、教育委員庄司一子への応答である。

 

(庄司)日本は様々な困難を抱えた児童生徒の支援・育成というのは力を入れてやってきていると思うのですが、天才教育・優秀児教育というのはあまり検討されてきておりません。今回、県立の中高一貫教育を視察させていただきまして、優秀な生徒が仲間とともに、喜々として学ぶ姿に接しました。県としてこのように優秀なお子さん、天才児を見出し、そして育てていく、才能を伸ばすということを、もっと推進していただけたらありがたいと思っているところです。42

 

 中高一貫教育校で「天才児を見出し、そして育てていく」のだという。庄司は教育心理学者らしいのだが、論文の題名を見てもごく普通の児童生徒が研究対象のようで43、およそ「天才」とは無縁のようだ。大井川の「天才」好きに感化されたのかもしれない。県内のどこかの中高一貫教育校に「天才児」が実際にいたと言っているようにも聞こえるが、真偽のほどは不明である。冷静に考えれば「天才」がみつかる可能性は低いし、仮にいたとして彼または彼女を中高一貫教育校で育てるのは困難だろう。そもそも本県の中高一貫教育校は、「天才」教育の場ではあるまい。勢い余って「天才」を持ち出してしまった庄司と大井川によるやりとりは、ほとんど漫才である。

 以下、本稿では中高一貫教育校の問題点のうち、いわゆる「民間人校長」について検討することにする。44

 

 無免許校長としての「民間人校長」

 大井川は、中高一貫教育校のほか、つくばサイエンス高校(つくば市谷田部やたべ)とITアイティー未来高校(笠間市友部ともべ)に「民間人校長」を配置することにし、すでに中高一貫校の対象13校のうち7校と、つくばサイエンス高校に配置した。さらに、2023(令和5)年度中に募集選考のうえ、2024(令和6)年度に中高一貫教育校6校とIT未来高校に配置する予定だという。

 1校計算があわないのは、太田一高(常陸太田市)に2020年度に配置された「民間人校長」が、2022年度末に4年の任期を1年残して自主退職(免職ではない)したために、一旦ふつうの校長を充てておいて、2024年度に再度「民間人校長」を配置することにしているからである。なお、それ以外に2023年度末に任期途中で退職することになる者がすでにいるか否かについては、「わからない」(県教育庁学校教育部高校教育課)とのことである。

 当初から「民間人校長」と言われているが、一般職の公務員でも応募できるし、実際に内閣府に「出向」していた文部科学省の職員(御厩みまや祐司)と、文科省に「出向」していた本県県立学校教員(下山田芳子)の2名が採用されているので、「民間人」に限るわけではない。「民間人校長」では不正確なので、別の名称をあてるべきところであるが、県教育庁は正式な呼び方は考えていない。「公募による選考」などと言っているが、これでは何のことかわからない。一番分かりやすいのは、教員免許を持っていない校長ということで「無免許校長」が最適だが、これでは身も蓋もなく、まことにお気の毒なので、「民間人校長」のままにする。この教員免許を持たない校長は、2005(平成17)年の学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)改正によってはじめて可能になった。

 

 第二十二条 国立若しくは公立の学校の校長の任命権者又は私立学校の設置者は、学校の運営上特に必要がある場合には、前二条に規定するもののほか、第二十条各号に掲げる資格を有する者と同等の資質を有すると認める者を校長として任命し又は採用することができる

 第二十三条 前三条の規定は、副校長及び教頭の資格について準用する。

 

 「第二十条各号に掲げる資格」はいろいろあるが端的には、教員免許を有し、かつ、教育に関する職に5年以上あったことである。それを教員免許も教職経験も一切なくてもいい、としたのである。2007(平成19)年に教員免許法が改正されたことで、2009(平成21)年から教員免許更新制が実施され、10年ごとに長時間の講習を受講することが求められ、それを怠ると免許は失効し自動的に失職することとなった(2022〔令和4〕年廃止)。その一方で、校長は、教員免許も教職経験も不要というのである。国会制定法ではない、たかが省令の一句で、学校教育法や教育職員免許法における校長に関する規定が、実質的に無意味なものになったのである。

 とはいえ、「同等の資格を有すると認める者」である。無条件で、誰でもどうでもいいというわけではない。しかし、この文言も無視されてしまう。「同等の資格」どころか、いささか問題のある経歴の持ち主や、教育について考えたこともない者、それどころか学校制度に対して敵意のようなものを抱懐している者が、まず大阪府で45、そして茨城県で、校長として学校に赴任することになる。。

 募集にあたっての茨城県教育委員会による「Q&A」である。

 

【Q3】本当に教育現場の経験がなくて大丈夫?

【A3】もちろんです!むしろ今回は、これまでの学校教育にない考え方を求めるため、民間出身の方が活躍のチャンスは多いかもしれません。46

 

 あまりの非合理性には呆れるしかない。普通自動車の運転免許も、自動車運転の経験もない者を、タクシードライバーか大型トラックの運転手として採用する、というのと論理は同じである。調理師免許も料理の経験もない者をレストランのシェフにする、というのと論理は同じである。しかも、このとおり「民間」を強調し、「民間出身の方が活躍のチャンスは多い」などと、趣旨も曖昧、根拠もないことを平気で言う。これが、いわゆる「新自由主義」の定型句であるが、大井川が直接、県教育庁に指示したものである。

 現在までの「民間人校長」の採用状況である(着任年、学校名、氏名、職歴)。

 

2020年 太田一高・付属中 鈴木清隆 新潟大学准教授

竜ヶ崎一高・付属中 太田垣淳一 外資系企業

2022年 水戸一高・付属中 御厩祐司 文部科学省・内閣府

土浦一高・付属中 ヨゲンドラ みずほ銀行・江戸川区議・自営業

水海道一高・付属中 福田崇 電通=在職出向

2023年 勝田中等教育学校 下山田芳子 茨城県立高校(教頭)・文部科学省

下妻一 高・付属中 生井秀一 花王

つくばサイエンス高 遊佐精一 テラ株式会社

 

 11人中3人が採用決定後に「辞退」

 一瞥しただけで、すでに「民間人校長」は失敗だったことがわかる。

 応募と選考結果を見る。(年表示は募集選考した年。着任年はその翌年で、着任校は先の表のとおり。いずれも年度〔4月から翌年3月まで〕)

 

  2019年:63人応募、3人合格、うち1人辞退

  2020年:33人応募、合格0

 

 つまり、2年目で「民間人校長」制度は頓挫したのである。本来なら、ここでやめるべきところ、民間の転職斡旋業者に募集業務を委託することにした。他の自治体、それどころか中央行政機関も同様に委託していて、なんと防衛省職員の募集も委託しているのである。その問題性・違法性についてはあとで検討することにし、とりあえず合格者だけ見ておく。

 

  2021年:4人合格、うち1人辞退

  2022年:4人合格、うち1人辞退

 

 4回募集して3回合格者を出したのだが、毎回辞退者がでている。どんな試験でも辞退者は出るものだが、3人や4人のうち1人、しかも毎回必ずというのは、異常である。11人中3人にもなる。残った合格者についてもあとで検討するとおり、おおいに問題がある者がいることと併せ考えると、応募者全体に問題のある人が多くいて、高い確率で最終合格者に紛れ込んでいるということである。そんなことはない、何を失礼な、とお怒りの向きもあるかもしれない。しかし、そうだとするともっと悪い。3人か4人しか採らないのに必ず辞退者が紛れ込むとなると、選抜される方ではなく選抜する方にこそ問題があるということになる。要するに人を見る目がない。鑑別能力がないのである。

 2021年と2022年については、応募人数をあえて記さなかった。というのは、2021年以降、応募方法が大きく変わったのである。端的にいうと、「エン転職」サイト内で、他に「本命」があるのだが、ふと目についた茨城県の校長募集に軽い気持ちで応募し、練習のつもりで気軽に受けたら、書類審査はもちろん、オンライン面接から、とうとう最終面接まで擦り抜けた、ということだろう。要するに甘く見られたのである。只今現在(2023年夏から秋にかけて)、残る7校7人分の選抜作業がおこなわれることになっているが、この間、2人について「週刊文春」にスキャンダル記事が掲載されるなど、鍍金めっきもだいぶ剥げてしまっている。冷やかし組が減ってその分好都合かもしれないが、真剣に考える人こそ二の足を踏むことだろう。応募者が量・質ともに低下するのは不可避である(失礼)。こんなことで例年の倍近い7人をきちんと選ぶことができるだろうか。

 

 太田一高校長はすでに中途退職

 一瞥しただけで失敗だとわかる、ふたつめの点を指摘する。初年度の2020年採用の2人は、2023年度末で4年の任期が満了するのだが、じつはそのうち1人、太田一高校長の鈴木清隆が2022年度末に退職している。3人合格したうち1人が辞退していたから、任期満了まで3分の1しか残らないのである。これではまるで労働条件や職場環境が最悪の企業の新規採用者の離職率である。

 鈴木清隆は、横河よこがわメディカルシステム47、科学技術振興事業団48を経て、新潟大学脳研究所附属統合脳機能研究センター准教授を退職して太田一高に赴任した。新潟大学などの旧「国立大学」は、2004(平成16)年以降は「国立大学法人」が設置する学校となり、国家公務員だった教授等の職員はすべて公務員ではなくなった。したがって、鈴木は外資系民間企業の経験もあるし、純然たる「民間人」だったということになる。(退職の経緯について本人がどう語っているかは、後ほど見ることにする。)

 以上、合格者中の辞退者、そして中途退職という、外形的な状況だけ見てきた。これだけでも「民間人校長」方針の失敗はあきらかで、取り止めるのが妥当だったといえる。これから中途退職者を含む8人について具体的に見ていく。あらかじめ危惧していたのをはるかに超える、驚きを禁じ得ない実態があきらかになる。

 

 

 

32 「Ⅲ「新しい人財育成」へのチャレンジ、政策12 魅力ある教育環境、施策⑶ 時代の変化に対応した学校づくり、主な取組③」 https://www.pref.ibaraki.jp/kikaku/kikaku/seisaku/documents/ibaraki_a4_02_2.pdf、67頁

33 別件だが、この「計画」の重大な誤謬をひとつ指摘する。「Ⅱ「新しい安心安全」へのチャレンジ、政策10 災害に強い県土、施策⑷治山治水対策の強化、主な取組④」として「洪水による浸水被害を防止・軽減するため、河川の堤防整備などの治水対策を推進するとともに、河川の土砂撤去や除草などの維持管理を行います。(主な担当部局:土木部)」としたうえで、2015(平成27)年の水害の復旧工事である「鬼怒川緊急対策プロジェクト」の「常総市上三坂かみみさか地区(決壊箇所)堤防復旧工事の概要」の現地の俯瞰写真と復旧堤防の断面図を記載している。(https://www.pref.ibaraki.jp/kikaku/kikaku/seisaku/documents/ibaraki_a4_02_1.pdf、56-59頁)

 鬼怒川の県内区間は「一級河川」すなわち国の直轄区間であり、水害前はもちろん水害後の復旧工事も国土交通省関東地方整備局(さいたま市)が全部管理している。茨城県庁は一切関与していないのだから、ここで復旧工事に言及し、復旧堤防の写真を掲げるのは失当である。これでは、茨城県庁が鬼怒川の復旧工事をしているとの誤解は避けられない。この重大な誤謬が小さな文字ではなく、大きな写真つきで載っている。審議会委員の責任もさることながら、大井川を含む県庁幹部職員はこの文書の点検を怠っているのである。というより、流域面積日本最大河川である利根川の最大の支流である鬼怒川のことなど何も知らないのである。大井川ら県庁幹部は治水についてほとんど何もわかっていない。

 現在、鬼怒川水害については国家賠償を求める被害者住民による訴訟が進行中であるが(二審・東京高裁)、茨城県庁は、水害の原因となった国の手落ちや対策の不十分性について、意見を述べることもしていない。知事大井川のもとでの茨城県行政は、県民の生命・財産を守るために、国に必要な対処を求めることを怠っている。こんなことで、大井川率いる茨城県庁が、原子力災害に関し国に対して必要な予防措置をとるよう求めることもまた、残念ながら期待できないだろう。

34 県議会のいばらき自民党から異論が出たという。読売新聞、2022年3月6日、https://www.yomiuri.co.jp/politics/20220305-OYT1T50107/

35 「第2次茨城県総合計画『新しい茨城』への挑戦 2022-2025」https://www.pref.ibaraki.jp/kikaku/kikaku/seisaku/kikaku1-sogo/shinkeikaku/sokeishin/r4sogokeikaku.html

36 https://www.pref.ibaraki.jp/bugai/seisakushingi/chousei/sougoukyouiku/r3nendodai1kai.html

37 https://www.pref.ibaraki.jp/bugai/seisakushingi/chousei/sougoukyouiku/r4nendodai1kai.html

38 大井川は、普段から県庁知事部局でやっているとおりに、教育委員会・教育庁を相手に振る舞っているのだろう。これは、知事部局の組織運営にとっても好ましくない。県職員全体の士気に悪影響を及ぼすのは必至である。本稿は、もっぱら教育行政について考察するものなので、いずれ別の機会に論ずることにしたい。ただし、7節で、「S高校」誘致や「茨ひより」に関して株式会社ドワンゴの便宜を図るという私的利益のために、産業戦略部職員を利用している件を瞥見する。

39 https://www.pref.ibaraki.jp/bugai/koho/hodo/press/19press/documents/kaikakuplan.pdf

40 https://www.pref.ibaraki.jp/bugai/seisakushingi/chousei/sougoukyouiku/documents/221208_r4sougoukyouikukaigi_gijiroku.pdf、8頁。

41 Information and Communications Technology 「情報通信技術」の頭文字。以前はITと言った。

42 議事録、7頁。

43 東海大学教授、元筑波大学教授。教育心理学、https://www.u-tokai.ac.jp/facultyguide/faculty/7079/

44 中高一貫教育校は、中等教育学校のほか、「〇〇高等学校とその附属中学校」の構成をとるものがあるが、本稿では、〇〇高校と略称する。その校長は、〇〇高校の校長と附属中学校の校長を兼ねるのであるが、たんに〇〇高校の校長と呼ぶ。

45 リテラ、2017年、https://lite-ra.com/2017/10/post-3512_3.html

46 茨城県が委託した「エン・ジャパン」の転職募集サイト「エン転職」(https://employment.en-japan.com/)の記述。現在は募集期間終了のため掲載なし。

47 ゼネラル・エレクトリック(GE)と横河電気製作所の合弁企業として設立され、現在は、GEヘルスケア・ジャパン株式会社(https://www.gehealthcare.co.jp/company/company

48 現在は、国立研究開発法人科学技術振興機構(埼玉県川口市、https://www.jst.go.jp/all/about/enkaku.html