鬼怒川三坂堤防の特異性と崩壊原因

 

2 越水による法尻洗掘の仮象

 

Sept., 15, 2020 (ver. 1)

Oct., 1, 2020

 

(i) 本当に「越水による破堤を示す事実」なのか?

 

 「鬼怒川堤防調査委員会報告書」(https://www.ktr.mlit.go.jp/river/bousai/index00000036.htmlの「表3.7 堤防決壊のプロセス」です。関東地方整備局河川部の広報担当者が作成したものでしょう。「堤体」が基底部まで全部崩壊流失してそこから河川水が堤内へと氾濫する「破堤」と、堤体の一部が損傷したものの一部が残った「決壊」とを厳密に区別しないなど、用語法がきわめて不適切です。この「表」は、本来「破堤のプロセス」というべきところです。

 この「表」のもっとも基本的な欠点は、プロセスすなわち過程の説明になっていないことです。プロセス process だというなら、すべての「STEP」は、同一地点の経時的変化を示すものでなければなりません。一応、右欄の断面図はそのつもりなのでしょう。しかし、左欄の写真はまったく違います。

 「STEP1」の写真は、決壊区間195m中の最上流部の30m区間、すなわち加藤桐材工場裏手のケヤキの大樹のある地点です。ここは、川表側法面からアスファルト天端部分までが洗掘されたものの、かろうじて川裏側法面が残った区間です。つまり、「決壊」はしたものの「破堤」には至らなかったB区間です。いっぽう「STEP2」の大穴はE区間です。さらに「STEP3」はC区間です(ただし写真の右側4分の1はB 区間)。「STEP4」の画面中央の水面はG区間です(以上の区間区分は国交省のものではなく、当 naturalright.org 独自のものです)。

 いずれも決壊した195m区間のなかでのことだとか、さらには「STEP1」と「STEP4」の写真には遠景まで含めれば全区間が映り込んでいるのだから間違いっていない、くらいのことを言うかもしれませんが、論外です。

 一応時間順にはなっているものの(ただし、関東地方整備局は、STEP3の写真の時刻〔13:00直前〕についてはわかっていないのです)、異なる地点の写真を並べて、一連のプロセス(過程)だと言っているのです。たとえていうと、「動物の成長のプロセス」と銘打って、「STEP1」に1歳のネズミ、「STEP2」に2歳のネコ、「STEP3」に3歳のヒツジ、「STEP4」に4歳のウマの写真を並べるようなものです。

 

参考:決壊した195mの6区間


 この「表」は、記述内容に多少の違いはありますが第2回の委員会の会合の際の配布資料にすでに掲載されていました。作成したのは河川工学の素人である高橋伸輔河川調査官であったとしても、安田進東京電気大学教授(委員長)、清水義彦群馬大学教授(委員長代理)ら、錚々たる「専門家」たちがこんな子供騙しを黙認し、みずからの名前で一般国民に公表したのです。清水教授は、加藤桐材工場裏手(B区間)が越水したにもかかわらず破堤しなかった原因として、決壊した195mの範囲外(上流側)の地点の堤内の農家の敷地の写真を示してその特徴(的外れでしたが)なるものを挙げてみせ、「鬼怒川水害から学んだこと」と題して水害の翌年の土木学会の会合で「記念講演」をしてしまうくらいですから、そもそもそれぞれの写真がどの地点のものなのか、よくわからなかったのでしょう(前ページ)。

 というようなことは、これまでも屡々指摘したことです。いつまでも同じことを言ってばかりいるのではなく、ここでは一歩進め、「仮説」として本質的な事柄を提示することにいたします。

 「STEP2」の大穴はE区間ですが、最初に破堤したのはここではなかったのです。関東地方整備局がみずから説明するところによれば、篠山水門に併設されているCCTV画像の目視により(12:52以降13:23までは、下館河川事務所のモニター画面を、時々静止画像をスクリーンショットしながら見ていただけで、動画として録画しなかった、とのこと)、12:50ころに最初に破堤したのは写真の大穴の下流側、このSTEP2の写真の画面右上の地点、すなわちF区間だったのです(「まさかの三坂5」参照)。ということは、(F区間の)破堤は(E区間の)越水による「川裏法尻洗掘」が原因ではないということです。すぐとなりだからいいだろう、というわけにはまいりません。B区間の加藤桐材工場敷地とその上流側〔A区間〕の農家敷地を混同する清水教授と同じ過ちです。

 しかも、写真に映っているE区間の状況は、「川裏法尻洗掘」でない可能性が高いのです。「可能性が高い」などと、報告書の曖昧語法を真似するのも止めることにします。あの状況を仔細にみると、越水による「川裏法尻洗掘」にしてはおかしなことがあるのです。仮説として提示します。実際に起きたのは越水による「川裏法尻洗掘」ではなく、堤体への河川水の浸透による川裏側法面からの堤体土の噴出であり、その噴出口に越水した河川水が流れ込んでいるのです。

 「STEP3」はC区間です。天端アスファルトからほぼ垂直に河川水が落下している状況は、越水が進行して「堤体法面洗掘(ていたい・のりめん・せんくつ)段階」にいたった段階のように見えます。しかし、それにしてはずいぶんとおかしな点があります。しかもE区間・F区間と違って、こちらは複数の静止画像のほか動画があります。ほかの堤防決壊事例では類をみないことです。この地点では、堤体への河川水の浸透による堤体の剥離・断裂さらに堤体土の吐出が起きて、川裏側法面上段が流失し、そこに越水した河川水が滝のようにほぼ垂直に流れ落ちているのです。

 以上の「仮説」について、根拠を挙げながら具体的に示します。まずC区間について、次にE区間とF区間について検討します。推定根拠も省略なしに列挙します。

 

 

(ii) 〔C区間〕百日紅の背後での堤体崩壊

 

 12:50ころとされるF区間の破堤から30分以上経過した13:27に、国交省職員がB区間下流端のケヤキ(画面左上隅に梢の一部。天端アスファルトの沈降している部分に反射しています)の下付近から撮影した写真です。(当日の越水と破堤の状況を撮影した地上写真は、「鬼怒川堤防調査委員会」の「報告書」に掲載されています。「まさかの三坂 8」で「写真21(13:27a)」として検討しました。)

 下流側はG区間のヘアピンカーブの手前の幅広部分の破堤がゆっくり進行中です。住民撮影のVTRによれば、13:00直前にはD区間は越水もしないまま大部分残っていましたが、それから30分以内で、上流側はE区間からD区間まですでに破堤し、C区間の破堤が始まった段階です。縦断方向への破堤の進行速度は、この時点では上流側が優勢です。

 画面手前で天端の堤内側が沈んでいるところをみると、天端の直下で川裏側の堤体崩壊が進み、宙吊りになって垂れ下がったようです。もともと沈んでいたわけではないでしょう。黒く映り込んでいるのはケヤキの枝葉です。

 住宅2と堤防の間にあった車庫(土地とあわせて住宅1の所有)が、基礎から引き剥がされて駐車してある乗用車(トヨタ・プリウス)ごと上流方向に流されて来たところです。基礎のコンクリートはその場に残り、このあと氾濫流で捲れて分解し住宅2の堤防側の腰高窓に突入することになります。車庫の上屋と車はこのあと、住宅1・加藤桐材工場と住宅2・住宅9の間の私道(住宅1と住宅2の私道はそれぞれ幅員3.6m、あわせて7.2m)から県道357号線、さらにその先に流されたようです。水害後の写真をみても、それらしいものはどこにもみあたりません。

 住宅2は、このあと14:00ころに基礎下の地盤が抉られ、西側の河道方向に倒れ込むように傾斜し、一階屋根の軒先が氾濫水に洗われ、さらに東側も落ち込んで、最終的にダルマ落としのような状態でほぼ1.5m落ち込みます。

 ここからC区間の堤防の状態を詳細に見ることにします。

 まず、この13:27撮影の写真に映っている範囲、すなわち天端アスファルトの破断面から手前の沈降した天端はどのあたりか推定します。住宅1の住人の方が撮影したビデオから、誤解の余地なく、ほとんど誤差なしに確定できます。そのさい手掛かりになるのは、ちょうど紅い花をつけている百日紅(さるすべり)です。2本あるのですが、このうち水害後も残った上流側のものがたくさん赤い花をつけていて、この百日紅の下に木戸があります。

 右の2枚は住宅1の住人の方が撮影したビデオ(https://www.ktr.mlit.go.jp/river/bousai/river_bousai00000101.html)からのスクリーンショットです。1枚目は、住宅1の1階西側(堤防側)の腰高窓から撮影したもので、百日紅と木戸、そしてその向こうの堤防天端からの越水状況が映っています。2枚目は、2階ベランダから、百日紅・木戸・堤防、そして河道と対岸の将門(しょうもん)川の篠山(しのやま)水門が映っています。堤防の川裏側の崩壊状況と越水の様子だけでなく、冠水している天端アスファルト、さらに川表側の舗装されていない天端まで映っています。このあとパンして下流側の破堤状況が映るほか流失寸前のL21k地点のポールがあるので、13:00直前だということがわかります(まさかの三坂7参照)。1階からの撮影は、その前ですが、越水状況に大きな違いはありません。


 

 このビデオ映像は、氾濫流のただなかに取り残され、このあとヘリコプターで救出されることになる住人の方が、まさに命がけで撮影したものです。このような映像が残された破堤事例は空前絶後でしょう。提供を受けた関東地方整備局は、今もウェブサイトで公開しているのですが、あろうことか解像度を落としています。時刻表示がないのはいそいで取り出したビデオカメラを設定する余裕がなかったためでしょうが、関東地方整備局が「編集」してしまったようで、各カット間の時間差もわかりません(まさか前後の入れ替えはしていないと思いますが)。さらに問題なのは、局内に設置した「鬼怒川堤防調査委員会」は、これを漫然と眺めただけで終わりにしてしまったことです。清水義彦委員長代理は、破堤前の映像だと勘違いしていて、それを土木学会の集会で公言しました(前ページ)。土木学会の心配までするつもりはありませんが、「鬼怒川堤防調査委員会」がこの程度のものだったことは重大です。会合の席では撮影時刻について、つまり、映っている事象の発生時刻についてなにも検討しなかったか、あるいは全員一致で勘違いしたのです。

 このページで提起する「仮説」は、ああもいえる、そうかもしれない、こんな可能性がある、などの無責任な曖昧語法はとらず、断言文として提起します。誰もが疑わない通説を全否定するもので一見すると荒唐無稽な戯言ですが、「仮説」だからといって何の根拠もないただの想像や思いつきを提出するわけではありません。判断の根拠をすべて示します。当 naturalright.org としては、結論だけを示すのではなく、その根拠を一切の省略なく全部提示したうえで、それら事実から読み取れる結論を明確に提示しようと思います。したがって、追試可能な仮説です。ポパー(K. R. Popper)流にいえば、反証可能な仮説です。どうか全根拠を精査くださり、そのうえで仮説を否定される場合には、妥当な説を提起くださるようお願いいたします。結果的に当方の素人仮説などどうなってもかまわないのですが、せめても国土交通省はもちろん数多の研究機関・大学の専門家たちが口を揃えて唱和して来た何の根拠もない思い込み(例外は前ページ末尾の2つのみ)を乗り越えて、三坂における破堤原因の事実解明に近づくことができるでしょう。

 




 まず、被写体の位置関係、堤防の6区間区分内の位置関係を確定します。パンして撮影されたカットをトリミングせずに並べます。有害無益なので、つなげてパノラマ風にすることはしません(広角レンズにはそれ特有の、望遠レンズにもそれ特有の画像の「歪み」があり、見るものを惑わせ誤解を生じさせるのですが、継ぎ接ぎのパノラマ写真となるとその比ではありません)。

 黄の長矢印3本は、視線の先にあるランドマークです。上流側はケヤキに掛かっていることもあり遠方にはっきりした目印がないのですが、アスファルト舗装の沈降している部分の中間点あたりがB区間とC区間の境界、すなわち堤内側でいうと加藤桐材工場敷地と住宅1の敷地との境界付近です。ケヤキの幹は見えませんが、枝・梢が大きく張り出しています。

 中央の長矢印は、木戸・百日紅、そして対岸の篠山水門の上流側の螺旋階段の中心柱(先端にCCTVカメラ。まさかの三坂5参照)を結ぶ線です。

 下流側の長矢印は、越水している下流端です。越水していると言っても、上流側のように歴然たるものではなく、ごく少量です。天端アスファルトと川裏側法肩の境界部分に注目し、越水の有無と、法肩の変形を読み取るのです。堤内側(川裏側)法面の最上部(法肩)に縦断方向に亀裂が入り、法面が天端アスファルトから剥離しつつあります。剥離は越水が原因ではありません(たいして越水していませんし、越水でここから剥離が始まる事例はないようです)。ここより下流側は最初から最後まで越水しなかったものの、F区間に始まった破堤が上流方向に波及することで破堤したD区間です。視線の先は、対岸の六所塚古墳(平良将〔将門の父〕の墳墓ともいわれる)の南端です。

 

 上が、視線方向と、その先にある対岸のランドマークを、水害翌々日の9月13日の国土地理院の航空写真上で示したものです(三坂における河川管理史3参照)。

 下はその拡大図です。ただし、水害後は百日紅以外は何も残っていませんから位置関係を示す役には立たないので、水害前の衛星写真です。なんども利用した写真ですが、GoogleEarthPro(MacOS、windowsなどパソコン用のグーグルアース)で選択表示できる、2013年3月22日の衛星写真です。背景色との関係で、VTRでは黄線、上の写真で赤線だったものを緑線に変えてあります。橙線は河川区域境界です。基本的には川裏側法尻線です(基本的には、というのは、B区間とその上流のA区間では法尻との微妙な一致・不一致があるからです。このへんの微妙さ加減に幻惑されて判断を誤ったのが、関東地方整備局の堤防調査委員会の清水義彦委員長代理でした)。緑一点鎖線がB区間とC区間の境界(区間は川裏側法肩に表示します)方向、緑破線が百日紅・木戸と篠山水門方向です。緑実線が越水しているC区間と越水しなかったD区間の境界、その先の六所塚古墳南端方向です。白の描き込みはのちほど見る川裏側法面の亀裂・断裂・洗掘の平面形です。

 

 まず、VTRに映っているこの地点の概要を見ておきます。B区間からC区間上流側では、アスファルト舗装された天端の河道側に土のままの天端があり、一部でその草が水面上に漂うように頭を出しています。D区間に連続するC区間下流側は、アスファルト舗装された天端の川表側に、舗装されていない天端があります。草が浮いて水面上に顔を出しているというのではなく、土堤の頂上部(「天端」)がアスファルト舗装された天端より高く盛り上がって、段付きになっているのです。C区間とD区間は、川裏側法肩における越水の有無で区分したのですが、川表側の形状の転換点はそれとは一致しないということです。

 以上のとおりビデオ映像の撮影位置、被写体となった堤防の区間等について確認しましたから、つぎに映像そのものの分析にはいります。

 

 

 これは第2回の「鬼怒川堤防調査委員会」の際の配布資料中の、決壊プロセス図です。(「報告書」のものは、浸透についての描画・記述が加わります。それはそれでよいのですが、図示と文字列の意味内容に不一致があり、混乱しているので、ここでは単純に越水にだけ注目している第2回会合の際の図を引用します。)

 右欄の模式図は、越水してきた河川水による川裏側の法尻の洗掘が進行拡大し、ついには川裏側法面全体が失われ、雪庇のようにオーバーハングした天端のアスファルト板から、河川水が滝のように垂直に落下している、というところです。そして、まさにこの局面にほかならない映像として、住民撮影のVTRから切り出したこのカットが使われているのです。

 

 これだと手前の方がほとんど映っていないのです。おおかた「堤防調査委員会」を取り仕切る関東地方整備局河川部の広報担当者(高橋伸輔河川調査官=当時)が、プロセス図の5コマ漫画の写真欄に当て嵌めるために、トリミングしたのでしょう。しかし、だったら画面上方の空の方をカットすればよいのであって、重大な堤内側をカットするのは失当です。それと、画面左よりさらに下流側では、だいぶ趣が異なるのです。この画面のように堤内側法面がなくなり天端のアスファルトから滝のような越水している(かのように見える)というのではない状況になっているのです。そこでは、越水はさほどでないのに法肩の堤体土の剥離断裂が進行するという、不可思議な現象がおきているのです。関東地方整備局河川部の河川調査官は若宮戸についての数々の詐欺的手法の当事者ですから(別ページで詳述)、たんなる無知によるものに見せかけた、真相を隠すための悪意のある作為かもしれません。安田委員長、清水委員長代理らがあっさり騙されただけでなく、日本中の「専門家」のほとんど全部が、これこそ越水による破堤の決定的証拠だと思い込むに至ったのです。

 すなわち、住宅1の2階ベランダから、B区間とC区間の境界付近をみおろすと、次の図のような状況になっているのだと誰も彼もが誤認しているのです。寸法・距離は、住宅1の2階ベランダ上のカメラ位置と、堤内側法肩におけるB区間とC区間との境界地点を通る垂直断面のものです(カメラレンズの中心線は堤防に対して垂直ではありません)。法尻の50cm段差の根拠はあとで示します。水平距離は GoogleEarthPro の距離計によるものです。もちろん近似値ですが、誤差は最大でも10%程度でしょう。堤内側法面が全部流失し、法肩からほぼ垂直に河川水がほぼ2.5m落下し、堤防基底面あたりにはすでに落水して来た河川水がひろがっていて、そこで落水が水しぶきをあげていて、その全景がこのようにベランダ上から見えている、という仮象です。

 しかし、上の図のような状況はありえないのです。VTRから別のコマをスクリーンショットします。

 橙文字で、目印になるものを示します。橙破線は、住宅1と北側(上流側)の加藤桐材工場敷地とのあいだの生垣です。ただし、冠水しているので地面は見えていません。この時点での水深はどんなに深くても30cm以内でしょう。

 堤内側法面が全部流失し、法肩からほぼ垂直に河川水が約2.5m落下し、赤実線の堤防基底面あたりに落水して来た河川水がひろがっていて、落水が水しぶきをあげている、というまことしやかなストーリーが作られているのですが、問題は、その手前に生垣があることです。生垣の高さは1.8m程度です。推定根拠は以下のとおりです。

 下左は、このすこし前に(撮影者の記憶では「10分か20分」前とのことです。だとすると、2階ベランダでの撮影が13:00直前ですから、12:40からF区間での最初の破堤時刻である12:50ころということになります)、1階西側の窓から撮影された画像です。前庭の冠水の深さは、おそらく10cm以下でしょう。車庫のコンクリート床面は手前の前庭から傾斜をつけて20cm程度高くなっているようです。駐車してあるトヨタ・プリウス(2009年発売のいわゆる第3世代型)の後部が見えています。リヤウインドウは最後部の垂直面と屋根から続く斜めの面のふたつある特殊な形状になっていて、その垂直部の下縁(黄破線)が地上から約1mです(車高〔赤破線〕は1490mm)。いっぽう、河川区域境界線上に生垣と木戸がありますが、下右のように50cm程度の段差があります(さきほどの図における地面の段差)。その上に木戸の框と生垣があります。高さ1.8mと推測します。木戸は堤防側に開く扉の上下に框との隙間があり向こうが素通しになっています。木戸と生垣の上辺は、住宅1の敷地から2.3mの高さになります。以上、写真からの推測にすぎませんが、何十cmも違うということはないでしょう。

 VTRのスクリーンショットに戻ります。左端に木戸とその上の百日紅が見えています。木戸の框の上縁が白く光っています。木戸と生垣は、住宅1の敷地から2.3mの高さがあります。生垣は、加藤桐材工場近くでは疎になっていますが、越水の落下線(赤実線)は画面上はその上方です。いくら解像度を落としてあっても、落下した水面に水しぶきや土塊がはっきり映っていますし、動画の数百コマをコマ落としでみているのですから錯視や誤認ではありません。(「報告書」の表中の写真は、小さなサムネイルほどなのに、解像度を落とした公開動画よりはるかに解像度が高く、これらの状況ははっきり映っています)。


 

 さきほどの図に生垣を描き加えると、こうなります。

 生垣が視界を遮っているかどうかが問題なのではありません。上流側の加藤桐材工場近くでは疎になっていて向こうがすこしは素通しで見えるのですから。問題は、生垣の上縁より下方に見えるはずの(=生垣で隠されて見えないはずの)落水線(VTRの赤実線)が、生垣の上方に見えているということです。

 誰もが信じこんでいて、毫も疑わない「川裏法面洗掘段階」は完全な幻想です。

 実際にどうなっているのかというと、下のようになっているのです。

 生垣によって遮られているので、法尻の状況はわかりませんが、STEP2ででき始まっていて、STEP3ではできあがっているはずの巨大な大穴は存在しないでしょう。もしそんなものがあれば、生垣や木戸は崩されて流失しているはずです。

 下図は、第2回委員会資料の5コマ漫画の「STEP3」の模式図を、向きを合わせるために左右反転の鏡像にしたものです。「T」(表土 topsoil )のさらに地下深くまで、しかも法尻から堤内地側までかなりの距離(この図では終端まで描き切れていない!)が洗掘されています。もしこの通りなら、生垣や木戸は跡形もない筈です。住宅1は上屋はもちろんコンクリート基礎どころか基礎地盤ごと崩壊・流失しているはずで、VTR撮影どころではないでしょう。鉄管の地下埋設支柱のおかげで流失をまぬかれた「ヘーベルハウス」も、これでは無理です。そもそも堤防天端での越水深は1mはありそうです。津波ではないのです。沖積平野を流れる大河川の「下流部」、平均傾斜率2000分の1以下の地点で、こんな越水深は現実にはありえません。こうなるとサイエンスでもテクノロジーでも、もちろんエンジニアリング(土木工学  civil engineering )でもありません。悪質な詐術です。

 それはともかく、法尻から始まった洗掘が法面下段から上段へ(平面形でいうと法尻・堤内地点から法肩・天端方向へ)進行し、ついには法面全体が流失しているはずなのに(それにしても上の漫画はひどい!)、実際には崩壊しているのは法尻や法面下段なのではなく、法肩から法面の中段までなのです。生垣の上縁より上方(茶実線より上)には、青二点鎖線までは水面(白抜茶破線)が見えます。青二点鎖線と青一点鎖線の間は滝のように落下する河川水が見えます。見えている土塊もありますが水が溜まっているその水面(白抜茶破線)は、法尻の高さではなく、法面中段です。

 なお、加藤桐材工場との境界近くでは生垣が疎になっていて向こうに水が見えます。しかし、ここが肝要なのですが、それがこの法面中段の水面(白抜茶破線)とおなじ水位なのかどうかは、このVTR画像からはわかりません。通説だと、わからないのに迂闊に同一水面だと思い込んでいるのです。むしろ、法面中段の水面とは不連続である、さらにいうと生垣の隙間から見えるのは、「水面」ではなく、中段から零れ落ちている状態だと考えるのが妥当でしょう。

 いずれにしろ、はっきりしているのは川裏側法面を流下した氾濫水が法尻に激突してそこから洗掘が始まったというのではないということです。法尻に「ドレーン工(かごマット)」を設置してあったところで効果は期待できないでしょう。

 次に、少し下流側の木戸と百日紅の向こう側がどうなっているかを見ます。

 

 解像度を落とす隠蔽工作にもかかわらず、パンしているのをワンカットずつコマ送りにして見ていけば推測可能です。毎秒30コマですから、たいした手間ではありません。

 「あ」と「う」では、天端からいく筋かにわかれて越水しています。法肩に残っている草によってこのような「白糸の滝」状態になるのです。法肩にまだ堤体土がすこし残っていることがわかります。また越水深はさほど深くないということです。20cmとか30cmの深さがあれば、草によるこういう筋はできないでしょう。

 「い」の水面に落下して水しぶきがあがっています。

 「あ」と「う」の間は百日紅によって遮られています。

 左の電力線引き込み用のポールのさらに左(下流側)は、天端は冠水し、法肩がすこし変形しているように見えます。これについては後ほど、13:27に国交省職員が天端上で撮影した写真と照合しますが、法肩のところから法面が剥離して間隙ができつつあるのです。

 ポールの右の生垣の上は、これだけみると何なのかさっぱりわかりません。「う」と同じ色味なので一見法面が大きく崩壊しているようにも見えますが、木戸の左にある、もう1本の百日紅です。1階からのカットの、左上隅です。木戸の真上に掛かっている1本目よりこちらの方が葉がたくさんあるのですが、そのためにかえって赤い花が目立たないのです。1本目はあの激流に耐えて水害後も残りますが、この2本目は流失します。


 「え」も判断の難しいところですが、百日紅の枝葉が少し垂れて来ているその間や木戸の框の上下から川裏側法面が見えているのです。つまり「う」は、「あ」同様に垂直に落下する氾濫水ですが、「あ」のように、見えている水面(「い」)に水しぶきをあげて落下しているのではなく、描き込んだ黄実線の向こうの間隙に落下しているのです。その間隙の手前には法面が残っているのです。

 そのように推定した根拠を示します。

 さきほどの1階からの撮影では木戸の扉の上下が素通しになっていて向こうが見えたのですが、2階ベランダからの映像では木戸の下部はまったく映っていません。なにより2階ベランダからは1本目(上流側)の百日紅が木戸の上にかかってしまい堤防の状況がよくわからないのです。いささか無理があるのですが、1階からの映像と2階からの映像で、同じ被写体に同じ色で印をつけ、消去法で堤防法面だろうと思われる部分の見当をつけてみました(赤=1本目の百日紅、黄=2本目の百日紅、コバルト=木戸の上部の框、青=生垣の向こうの植木、橙=生垣の手前の植木、紫=堤防の川裏側法肩)

 下左、2階からの映像の白丸内は、手前に植木などはなさそうですから、おそらく川裏側法面が見えているのです。


 

 この状況は、1階からの映像ではかなり確実にわかります。1階西側窓から木戸と百日紅方向を撮影したものです。木戸と生垣がすこし傾いているのはカメラの傾きのせいです。

 もしこの1枚の静止画像しかないというであればなんともいえませんが、動画が残っているのです。コマ送りにすると、木戸の向こうの動くものは赤実線の上の堤防天端から流れ落ちる水だけです。下はさらにアップで撮影したカットです。見間違いようもありません。

 堤防を越えて流れてくる河川水は、法肩の草によって振り分けられていますから、それほど深い越水深ではありません。しかし、木戸の下からは、チョロチョロと水が流れてくるものの、あまりにも少なくて、そのような堤防からの落水とは比べ物になりません。直接ここから流れ出すのではなく、後述のように法面中段にできた間隙を上流側に流れ、そのあと零(こぼ)れ落ちて住宅1の敷地に流れこんでいるようです。

 法面の最下部つまり法尻がそのままあるのか、崩れているのか、まったくわかりませんが、大穴が空いているようには見えません。

 

 1階西側窓から木戸と百日紅の方向をみた時の断面図を示します。茶実線のように法面上部が洗掘されているのです。ただし、深さまでは、見えないのですからわかりません。

 この間隙(これほど四角四面ではないでしょうが)に落ちた水は、直下の木戸から流れ出してはいません。木戸の下の隙間からはチョロチョロしか出ていないのですから。上の同じ方向をワイド 側にズーミングしたときの映像から判断して、右側=上流側に流れ、そこでの落水と合流して住宅1の敷地に流れ込んでいるようです。

 住宅1の1階窓内のカメラ位置と、木戸・百日紅を通る垂直断面を示します。延長方向には篠山水門があります。(1階窓と2階ベランダでは、高さだけでなく水平位置もすこし異なりしたがって水平距離も若干違うのですが、ここでは2階の場合の距離で作図します。)

 2階ベランダからの映像にもどります。

 2階ベランダからだと、上流側の百日紅から斜めに花をつけた枝が垂れていて少々視野にかかっていますが、扉の上縁より上方(茶実線より上)は、青二点鎖線までは堤防法面です。青二点鎖線と青一点鎖線の間は滝のように落下する河川水が見えます。2階ベランダからの映像では木戸の下部はまったく映っていません。

 以上、3枚の断面図(仮象をいれれば4枚)を提示しましたが、問題がないわけではありません。もとの法面を緑細実線で描いたうえで、VTRに映っている法面部分を茶実線で重ね、法面上中段の抉れを茶の縦線で書き加えてありますが、断面形状を含め、実際には見えていない部分まで図化してあります。とくに間隙の底面は水溜りになっていますが、深さは全くわかりません。ところどころ土塊が見えていますから、全体がすごく深いということはないでしょう(VTR同様、13:27の地上写真でも水面の一部に土塊が見えます)。

 特に問題なのは、1階から撮影したものと2階から撮影したものの間に時間差があるのですが、ここではその間の堤防の状況の変化を捨象してしまっています。場合によっては致命的欠点となるのですが、いまのところは、この「10分から20分」には越水深や法面の状況にはさほどの変化がなかったものとして図化しています。今後、解像度の高い映像の入手に努めるなどして、改訂したいと思います。