若宮戸の河畔砂丘 5 国交省が作った騙し絵

「品の字」積み土嚢の上に崩れ落ちた小林牧場鶏舎と「A社」ソーラーパネルの残骸。周囲は大量の砂をいれて整地してある 

 

17, Jan., 2019.

 

 国交省が水害後におこなった広報は、事実を隠蔽し国民を欺くためのものでした。三坂については当初の単純な「越水による破堤」論は多少の軌道修正を余儀なくされたものの、極度に単純化した通俗的見解を押し通し、24.75kについては実態をほとんど公表せずほぼ無視することに終始しました。

 その二か所に比べれれば、25.35kすなわち「ソーラーパネル」地点については何があったのかは一見してあきらかだと多くの人が考えているようですが、そうとばかりも言えないのです。国土交通省は若宮戸河畔砂丘の破壊を長年にわたって黙認放置しつつ堤防建設を怠り、激烈な氾濫を引き起こしたのですが、その無為無策無責任を糊塗するために数々の詐欺的言説をくりだしたのです。それを国策派利水治水研究者らが鸚鵡返しにして弁護しただけでなく、それを批判すべき人たちまでが「自然堤防」の誤解をはじめとするさまざまの誤謬・単純化・一面化の陥穽に落ち込んでいるのです。それらをひとつひとつ解明し、若宮戸の河畔砂丘における溢水の本質を明らかにしなければなりません。

 国交省が、若宮戸河畔砂丘とくに25.35kの溢水についておこなった広報は、以下のとおりであり、しかもこれに尽きます(国土交通省 関東地方整備局「『平成27年度9月関東・東北豪雨』に係る洪水被害及び復旧状況等について」2015年11月18日、http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000636288.pdf)。当ウェブサイトでも何遍も見ましたが、なにせこれしかないのですから、何度でも再掲し問題点を摘出することにします。一瞥ください(クリックすると拡大します)。

 




 鬼怒川水害における全氾濫量のなかばは、若宮戸の河畔砂丘地帯からの溢水によるものとみられるのですが(別ページで検討)、この地点に関して国土交通省がおこなった説明はこれだけだというのですから、驚きかつ呆れるほかありません。というのも、たんに量的な少なさというだけではなく、その内容がことごとく事実の隠蔽、虚偽の分析、それによる根拠のない責任回避姿勢の表明であるからです。とりわけ、下に抜き出して拡大した不正確な平面図と立面図が核心的内容です。事実を明らかにするのが目的であれば適切な写真と標高図はすでにあるのに、このようなわざとらしい下手くそな図をあえて作ったのは、たんに不器用で美的センスが欠如しているからというだけではありません。事実を知られたくないからです。

 以下このページでは、平面図が隠蔽する現地の標高については⑴で、立面図が虚像を捏造しようとする地形については⑵で解明して、これらの虚偽性を明らかにし、国交省が隠蔽している実態にせまることにします。

 



(1)土嚢はどこに積まれたか?

 

 国交省が繰り出した詐術の解体の出発点は、国交省が下手なお絵かきソフト画像を繰り出すことで隠してきた現地の地形を克明に見ることです。

 最初、2015年9月19日に公表された文書に掲載され、その後も撤回されることなく使い回しされることになるこの平面図は、新聞やテレビがうるさく騒ぎ立てるので、完全無視という常套手段を使うわけにもいかなくなった国交省が異例のスピードで広報したものです。あまりにも単純な図形の組み合わせであり、気の利いた小学生ならずっとまともな説明図を書くに違いありません。児戯にも等しいというより児戯以下の図ですが、さいたま市のオフィス(国土交通省関東地方整備局)で素人役人が故意に、いったい何のことかわからない支離滅裂な図として作成したのです。

 

 

 「イメージ」とは視覚表象のことであり、つまりは「図」のことであるのに、「イメージ図」などとふざけてみせたのは、報道企業がよくやるゴマカシの手口を模倣したのですが、しかしそれによって、これは本物ではありませんよ、あくまで作り物ですよ、とつい本音を漏らしています。河畔砂丘 river bank dune であって「自然堤防 natural levee 」などではないことを知りながら、あとで他人の所為にできるよう「いわゆる」をつけてわざわざ「自然堤防」と呼んでいます。国策治水方針に批判的な人たちまで、「自然堤防」という間違いに囚われていることにつけ込んで、混乱を長引かせるための作為です。そして最後の一手が、「河川区域」の境界線です。国交省にはいかなる法的責任もないのですよ、と言い逃れるためにつかんだ藁です。

  すでにある図面や写真をそのまま使えば良いのにわざわざ新たに描いてまで事実を単純化しようとしたことで、どうしても隠せない「大型土のう」の不自然な屈曲が、かえって浮き彫りになっています。まさかこれを直線に描いてしまうわけにもいかず、カクカクさせざるを得ないのです。全体を単純化すればするほど、よけいに土嚢の不自然な屈曲が目立ってしまうのです。作為が逆効果になっているのです。

 こんな子供騙しをそのまま転載した新聞はまさかないでしょうが(?)、不出来なポンチ絵にまんまと引っ掛かる粗忽者も続出したため、撤回もされずにインターネット上でいまだに公開されているのです。

 事実をありのままに示しているものはないのかと思って、いろいろ探してみたところ、このようなものがありました。 kinugawa-suigai.seesaa.net が取得して提供している情報です(http://kinugawa-suigai.up.seesaa.net/pdf/waka-5-7.PDF)。

 

 

 これは国交省が作成したものではなく、「品の字」土嚢の堤防もどきを受注して施工した業者が、完成報告書として下館河川事務所(茨城県筑西〔ちくせい〕市)に提出したものです。もとの図面は国土地理院の2500分の1地形図のようです(北が画面上方だったものを時計回りに90度回転させたため記号が全部横倒しになっています)。当然平面配置はただしく描かれているようで、お絵かきソフトで描いたさっきの絵のように不正確ではありません。しかし、等高線の入り方が不十分で今問題にしている程度の詳細さで現地の地形や標高を理解する役には立ちません。なにより困るのは業者が記入した「大型土嚢」の位置・形がまったく不正確であることです。掘削前にあったものらしい崖との位置関係も不正確です。

 次は、「若宮戸の河畔砂丘 4」で見た、サンコーコンサルタント株式会社が作成した「平成15年度 若宮戸地先築堤設計業務報告書」(2004〔平成16年3月)(http://kinugawa-suigai.up.seesaa.net/pdf/waka-8-3.pdf)の図(第4章の末尾ページ、3-11)のうち、25.35k付近を拡大したものです。築堤の必要性を明らかにする前提として、若宮戸の河畔砂丘において氾濫のおそれのある地点を示してあります。まじめに広報文書をつくる気があれば、これをもとに、標高の数値を鮮明化して読み取りやすくし、1コマ目で掘削前の状況を示したうえで、2コマ目で掘削部分を図示してA社とB社のソーラーパネルや「大型土嚢」を書き加えればよかったのです。

 しかし、そうするとB社による掘削前の時点ですでに問題があったこと、つまり、砂丘の下流側24.5k付近で途切れている堤防天端の標高22.8m(Y.P.値。一般的なT.P.値より0.84m大きな数値となる)と比べても(別ページ参照)、大幅に低いところがかなりの距離にわたって存在したことが露呈して、たいへん具合の悪いことになるのです。その22.8mですらまったく不十分なのですが、それより1m以上ひくいところが何十mもあったのです。平面図に標高を書き込んでしまうと、もはやゴマカシようもないのです。

 そこで、関東地方整備局の広報担当は、形も極度に単純化したうえで標高を一切明記しない平面図をあらたに作ることにし、標高については立面図を別につくって、もともと標高が低かったところを大幅に狭める詐術を仕込むという、あとあと問題になるのが必至の賢明ならざる策を弄することにしたのです。この程度のヒネリで反国策派をまんまと騙せれば儲けものだし、いずれ事実が明らかになったところで、訴訟が提起されるころにはどうせ別の部署に異動しているから一向に構わないのです。

 国会事故調査委員会の敷地内立ち入りすら拒絶した福島第一原子力発電所の事故調査であれば、この程度の見え透いた小細工であってもそれを突破するのは困難なのですが、若宮戸河畔砂丘については隠蔽工作を徹底するのはどだい無理にきまっています。私たちとしては、関東地方整備局があえて回避したことを自分たちでやってみればよいのです。

 

 2003(平成15)年の国交省文書にあったミリメートル単位!の克明な標高図を各時期の衛星写真画像と重ね合わせ、一枚ずつみてゆくことにします。クリックし虫眼鏡ツールで拡大すると、等高線や測量点の標高が全部読み取れます。

 標高図は、ウェブサイト kinugawa-suigai.seesaa.net が提供する資料によるものです。http://kinugawa-suigai.up.seesaa.net/pdf/waka-8-4.pdf  の3〜4ページからの引用です。たいへんな努力によって収集し整理整頓した重要資料を惜しげもなく公表し続けるウェブサイト kinugawa-suigai.seesaa.net にたいし、心より尊敬と感謝の気持ちを表明いたします。グーグル、ヤフー、マイクロソフトが重要データを無償で提供していることも忘れるべきではありません。おなじ営利企業でありながら報道企業がしようともしない社会貢献をしているのですから。

 同一の標高図を重ねているのであって、それぞれの衛星写真が撮影された各時期の標高図ではありませんから、くれぐれもご用心ください。そんなものは誰も持っていなのですから、これは窮余の策にすぎません。やむをえずおこなう中学生レベルの簡単な作業なのですが(小学校高学年?)、それすら怠った数多の専門家がことごとく騙されてきた、国交省の見え透いた、しかし罪深い嘘が露呈します。

 

 

 最初に標高図のみを示します。(白黒反転)

 クリックして拡大表示すれば、等高線の数値や、測量点の標高の数値も読み取ることができます(すべてY.P.値です。通常のT.P.値より0.84m大きな値になります)。

 築堤案を記した図面なので、ありもしない堤防が描かれていて邪魔といえば邪魔なのですが、あとで役に立つので、それまでは我慢することにします。

 

 

2005年2月6日(GoogleEarthPro)

特段の地形改変が行われている様子はうかがえません。2003年の報告書中の標高データは、この時期の実態とおおむね一致すると考えられます。

 

 

2005年3月27日(GoogleEarthPro)

 

 

2006年(国土交通省広報資料)

砂丘の掘削範囲を示すA−A’の位置は、かなり下流側(左側)にズレています(青線の太さの3倍程度)。2014年3月22日の映像を参照ください。それはともかく、A’記号との河道の間あたりの地形は多少改変されているようです。

 

 

2010年11月30日(GoogleEarthPro)

 

 

2012年3月16日(GoogleEarthPro)

画面右、のちの掘削地点の上流側で、樹木の伐採がおこなわれたようです。

 

 

2013年6月4日(GoogleEarthPro)

伐採地点の裸地に樹木の影がさしています。砂丘自体が掘り崩されたのかどうかは、はっきりとは解りません。もしかしてこのあとのB社による砂丘掘削にそなえて、北側(画面右)に斜面を作る準備なのかもしれません。

 

 

2013年6月4日以降、2014年3月22日以前(Bing)

A社ソーラーパネル設置のための伐採・整地がおこなわれました。2005年以降、最初の大きな変化です。若宮戸河畔砂丘の白い砂がむき出しになっています。

 

 

2014年3月22日(GoogleEarthPro)

A社のソーラーパネルがすでに設置され、B社が砂丘の掘削をしている最中です。これまでも若宮戸河畔砂丘の掘削を漫然と放置してきた国土交通省は、引き続きこれを拱手傍観したのです。

 

 

2015年2月2日(GoogleEarthPro)

掘削・整地が終わってB社のソーラーパネルが設置され、さらに「品の字」積み土嚢の堤防もどきが置かれました。

 

 

2015年2月以降(YahooMap)

B社のソーラーパネルの中央付近にパネルのつかないフレームが追加されたところです。ここは最後までフレームだけとなります。

 

 

2015年9月11日(GoogleEarthPro、なおGoogleCrisisResponseの衛星画像と同じ。GoogleCrisisResponseについては別ページ参照)

水害の翌日、午前10時ころと推定されます(時刻の推定については別ページ参照)。

 

 

2015年9月11日以降(国土交通省広報資料)

9月17日に完成する「仮堤防」の設置作業は未着手なので、9月11日以降の早い時期です。

押堀(おっぽり)の様子から、水流の強かったところや、水流の向きがよくわかります。後で土嚢の堤防もどきの損傷具合と照合することにします。ただし、2006年のものと比較すると、2棟ある鶏舎のうち1棟だけがクッキリし、家屋よりはるかに小さいソーラーパネルの方がエッジの立った巨大な建造物に見えてしまうなど、部分的に過度の強調がおこなわれているようで、少々注意が必要です。

 

 

2015年9月17日直後(GoogleMaps)

「仮堤防」完成は9月17日です。その直後、24.75kの状況からみておそらく当日か翌日でしょう。

 

 

2015年10月9日(GoogleEarthPro)

3段積みムツウロコ土嚢の仮堤防が完成し、「堤外」はきれいに整地されています。おおくの「現地調査」はこの段階でおこなわれているので、氾濫直後の状況はほとんどうかがい知ることができなかったようです。さらに重要なのは、一見「堤内外」に標高差がないようにみえることです。

 

 

2016年10月26日(GoogleEarthPro)

築堤の中間段階。ムツウロコの仮堤防が撤去された部分へのB社のソーラーパネル追加前です。左側に縦に見える市道東0272号線の切り通し部分を埋め戻して標高を上げたうえで、その南側(画面左)に、あらたに築堤工事車両の通過道路を整備したようです。(2005年9月10日に、市道東0272号線切り通し部分からの氾濫があったことは国交省は秘密にしていますし、今まで誰も指摘していません。氾濫の証拠は次々ページで示す予定です。)

 

 

2018年5月15日(GoogleEarthPro)

築堤工事が完了し、ソーラーパネルの追加設置も終わっています。

 

 標高図と衛星写真の重ね表示はここまでです。

 いろいろなことがわかるのですが、今あわてて推測を並べることはせず、次の⑵に進むことにします。

 

 


(2)「掘削前の地盤高」と「土嚢の高さ」

 

 騙し絵平面図の次に、騙し絵立面図について検討します。 

 国土交通省関東地方整備局下館河川事務所は、ソーラーパネル設置業者(「B社」)による河畔砂丘の掘削を拱手傍観したうえで、住民と常総市役所から対策を求められたのに対し「品の字」積み土嚢の堤防もどきでお茶を濁して大規模な溢水を招いたのですが、みずからの落ち度を認めるどころか、掘削前でも砂丘の標高は9月10日の最高水位のY.P.=22.0mを下回っていたのだと言い出し、掘削を容認したことの責任を免れようとしているのです。

 

 

 この図によると、最高水位を下回っていたのは掘削された200mの全区間ではなく、せいぜいその5分の1の幅40m程度のようです。掘削後に全区間200mにわたって21.3mの高さで土嚢を積んだといっても、もともと一番低かった21.36mよりさらに低いうえ、しかも22.0mを下回る幅を5倍の200mに広げてしまったわけですから、威張れることではありません。三坂の最初の破堤幅の20mをもちだすまでもなく、24.75kではほんのわずかの侵入口からの「ちょろちょろ」にはじまって、結局あの巨大な押堀の突破口をつくって激烈な氾濫が起きたわけですから、多少の幅の広狭があったところで結果はたいして違わなかったのかもしれないのですが、ここまで国交省がこだわるのは、黙認容認した砂丘掘削がなくても氾濫はおきたのだと言いたいがためなのです。氾濫の話をしている時に、「平均」などと言うのですから、その不真面目さは相当なものです。国交省の説明が、無知や誤解にもとづくものなどではなく、悪意に満ちた故意の虚偽説明だということがよくわかります。

 もっとも、B社による掘削がなくても氾濫は起きたのだとすれば、そういう状態を放置してきた河川管理者たる国土交通大臣の責任は免れないことになるのです。国交省の行為は、まさに天に唾するもので、ただちに自分の立場が危うくなるものなのです。しかし、いずれ自分が吐いた唾が落ちてきたところで、河川区域外のことなので法的責任はありませんと言うに違いありません。事実が問題になれば国交省にはおよそ勝ち目はないのですが、このようにして、話をどんどんあらぬ方へと逸らしてしまい、低レベルの抽象論に引き込んでしまえば、時間とエネルギーの消耗戦になり行政側が断然有利だ、と考えているのでしょう。

 事実を問題にする限り責任は免れないのだとすれば、やるべきことは簡単です。事実を問題にしなければよいのです。ほとんどすべての情報を握っているのですから、あとはそれを一切明らかにしないことに徹すればよいのです。ただし、そうはいっても、まさか、「一切何も言いません、全部隠します」と公言するわけにはいかないのです。もちろん、「隠したりはしませんが、一切何も知りませんでした」というわけにもいきません。下手に隠し立てをするのではなく、かえって積極的にデタラメ放題のわけのわからない説明を繰り出して世間を納得させてしまえばよいのです。

 新聞テレビが騒ぐのは最初のうちだけですし、土木学会に結集する国策派利水治水学者たちのちょっとオタクじみた研究の翼賛も得られます(別ページ)。新潟大学はじめ伝統ある大学や研究機関は、たいてい2泊3日程度のお手軽な現地調査しかせず、国土交通省関東地方整備局に便宜を図ってもらったかどうかに関わらず、国交省の公式見解をなぞるものばかりで、高校生のレポートにも見劣りがします。

 裁判になったらなったで、あらかじめ仕込んでおいたデタラメな事実説明で、原告と裁判所を混乱させてしまうのがよいのです。「黙秘します」ではなく、絵空事の嘘八百をもっともらしく繰り出して相手と裁判所を幻惑し騙しとおすことで、原告の請求を棄却させる道筋がつけられるのです。国家賠償法第2条がいわゆる「無過失責任主義」をとり、賠償の実施には国の「故意または過失」は要件とはされず、「営造物の設置又は管理に瑕疵」があったことの立証で足りるとはいえ、それは被害者原告に大きな負担を強いるものであることには変わりありません。原告を丸め込み、判事を納得させる程度の「事実」を構成しさえすれば敗訴は免れる、そう判断して、国交省は災害発生当日から今日にいたるまで、三坂で、24.75kで、25.35kで、単純化した空理空論、素人を黙らせるもっともらしい与太話をせっせと供給してきたのです。

 騙し絵の平面図や立面図は、事実を立証するためのものではありません。世間と原告の関心を徹底的に事実から引き離すことが目的です。その意味でいうと、さきほどの騙し絵平面図もさることながら、こちらの騙し絵立面図はその崇高な使命をずいぶんと果たしてきたといえます。たとえば、水害後になってはじめてわかる水位22.0mを基準にして、それより高いとか低いとかいう議論になってしまっているのです。(河畔砂丘の〝畝〟がそのまま堤防の代替になるかどうかは別の話ですが、その点はさておくとして)氾濫の危険性の有無というなら、すくなくとも25.25kの計画高水位の22.350mに余裕高として1.5mを加えた23.850m、つまりは、Y.P.=24mを目安にしなければならないはずなのに、いつのまにか2mもずれたところに注意が向いてしまっているのです。水害の件で2mも違ってはもはや異次元です。

 若宮戸河畔砂丘の24.75kについては、24.5k近くで途切れている(下流に向かって見れば、そこから始まる)左岸堤防の堤高はわずか22.8mであり、それが接している砂丘の末端は21m少々しかないのに、なんとなく「山付き堤」のように思わされてしまって全然問題にもならず、市道東0280号線の切り通しが24.75kの大氾濫の原因だというまことしやかなスリカエが流布してしまっていたのです。しかも、それらはすべて河川区域内なのですが、25.35kでは赤太線で強調するくせに、そこではそんなことは噯(おくび)にも出さなかったのです(別ページ)。災害前の国交省にとっては、本当は河川区域などたいした意味はなかったのです。河川区域外だから放置したわけではないのです。同じ若宮戸河畔砂丘における2か所の溢水なのに、そこでの機序はいささか異なります。一方の説明手法で他方を説明できるわけではありません。当然ながら、国交省による論点ずらし、注意逸らしの手口もことなります。

 25.35kにおける大規模な氾濫の機序、とりわけ「品の字」積み土嚢の堤防もどきがそこで果たした、もしくは果たさなかった作用はこれまで考えられてきたように単純ではないようです。土嚢の天端高に関心を集中させようとすることで、国交省はもっと重大な問題への注意を逸らしているのです。いまのところそれを見破った人は2人しかいないのです。国交省の騙し絵2題が隠している本質的事実に到達するために、当 naturalright.org はその後追いをしているところなのです。

 国交省は、25.35kは「河川区域外」だったことに異常にこだわってみせたことで、かえって25.35kを含む若宮戸河畔砂丘全域における河川区域の設定の違法性(「瑕疵(かし)」どころか「重大な過失」、さらには「故意」性も推認しうる)を浮き彫りにしてしまったのです。しかし、当 naturalright.org は今すぐ拙速に法律問題へと進むのではなく、当分は事実問題の追窮に徹することにいたします。まず地図と写真をたよりに騙し絵の虚偽を解明しなければなりません。

 国交省の立面図には、いろいろわからないところ、おかしなところがあります。

 「地盤線」とは何でしょうか。砂丘を横からみた峰の形、つまりスカイラインということのようです。当然、ある平面で切った時の形ではなく、奥行きは区々のようです。つまり平面図上では一直線上には並ばないわけで、どうしてそんなことをするのでしょうか。それに、もっとなだらかな線で描けば良いのに、あえて11点、しかも間隔が一定しない11点を直線で結んでいます。何か狙いがあるにちがいありません。

 「崩壊無し」は意味不明です。ブルドーザとバックホウで砂丘を崩すのは「崩壊」とは言わないでしょう。

 「側線」とは何でしょうか。右上の図は、海岸の測量に関するものですが、「横断測量」の例です。国交省の広報文書の「側線」は「測線」の誤りです。測量の線ということなのに、脇にある?ので「側線」だと思ったのでしょう。サカナの側線は感覚器官ですから、測っているには違いないのですが……。こんなことからも無知な素人の役人が口から出まかせのデタラメを書いていることが明らかです。仮名漢字の変換ミスでした、では済まされるものではありません。(たぶん、今でもこの間違いに気づいていないでしょう。)

 問題なのは、こんな馬鹿げた図を作成したことを批判する人がほとんどいないことです。それどころか、国交省の河川管理の責任を追及するという人たちが、いまだに事実の説明のために安易にこの図を使っているのです。国交省にしてみれば、まさにしてやったり、というところでしょう。

http://web.pref.hyogo.lg.jp/whk12/documents/rep4-4.pdf 

ただし現在はリンク切れ



 まず、国交省の素人役人によるポンチ絵第2弾のつくりかたをあきらかにします。そうすることで、それが何を隠しているかがだんだん浮き彫りになってくるからです。

 下の写真は、さきほど⑴で見た、2005年3月27日のGoogleEarthProの衛星写真です。のちにB社のソーラーパネルが設置されることになる広大な草地に十数本の筋が見えます。

 

 

 これに、やはりさきほどのように標高図(http://kinugawa-suigai.up.seesaa.net/pdf/waka-8-4.pdf  3〜4ページ)を重ねてみます。ただし今度は白黒反転をせず、等高線と標高の数値を黒で表示します。クリックして拡大し、虫眼鏡ツールでさらに拡大すると、草地の筋の意味がわかります。

 

 測量の際に見通しがきくよう、あらかじめ草刈りをしたのです。つまりこれこそ横断測量の「測線」の痕跡です。それをこの地図中に記入してみます。もちろん、長さには限界があるのですが、ここでは途中では切らず、画面全体に引いてしまいます。

 青が、標高の数値が直線上に3点以上並んでいるものです。1本(後ほどの「5」)を除き、草刈り跡と一致します。

 緑は、標高図に数値の記載はないが、草刈り跡があることから実際に測量がおこなわれたと思われるものです。

 いままで邪魔だった堤防案の線が、やっと役立つ時がきました。測量は堤防案(第1案)の軸線から直角に測線を設定して実施したようです。

 


 

 ここでグーグルの写真との重ね合わせを終わりにし、標高図とそこに書き加えた青と緑の測線だけにします。

 

 

 砂丘の掘削部分を拡大します。

 

 

 次に、例の騙し絵内の11箇所の「各側線〔測線〕で最高の地盤高」に番号を振ったうえで(右下の図の吹き出し)、その「地盤高」に相当する地点を、この地図中に引いた各測線上から探し出し、こちらにはその標高を記入した吹き出しをつけます。

 11箇所中で、5本の青(1、4、5、8、10)の測線と、4本の緑(2、6、7、9)の測線、あわせて9本の測線上には、それぞれに一致する標高の地点があります。

 

 先走ってコメントしておくと、5と8の間に6、7を追加してこの部分で測線が立て込んでいるのは、そこがとりわけ標高が低くなっているのをおおいに気にしているということです。測量会社が問題視したことを、受け取った下館河川事務所はその時点では平気で見逃して気にもとめなかったのです。それをいまごろになって、もともと低かったのだと、鬼の首でもとったかのように?吹聴しているわけです。

 

(なお、騙し絵の折れ線グラフの「5」は21.89mで、「6」はそれより低いのに21.96mとなっています。折れ線グラフの線引きを間違ったのかもしれませんし、「5」の数値を誤って1cmほど左にずれて記入してしまったために、数値が入れ替わっているのかもしれません。後の方のような気がしないでもありませんが、こちらで訂正して差し上げる義理もありませんので、そのままにしておきます。7cmの違いなのでどちらにしても大きな違いはないとはいえ、「側線」もそうですが、騙し絵なりにもうすこし慎重に作ったら良さそうなものです。こんな調子ですから、国交省は大氾濫を引き起こしてしまったのです。)

 

 

 

 3と11には、対応しそうな測線や草刈り跡がみあたりません。やむを得ず、この2点については、それぞれの数値に対応する標高の地点に吹き出しをつけ、そこを通る仮の測線を茶で付け加えることにします。(その1点だけ測量したのかもしれませんし、11は掘削の範囲外にはみ出しているので、なくても差し支えないのですが。

 ということで、その11を除けば、10箇所中3以外の9箇所で一致するのですから、例の騙し絵はこのようにして作られたと考えて間違いないでしょう。

 

 


 以上で国交省作成の平面図と立面図の騙し絵2枚についてのひととおりの検討をいったん終わります。まだ入り口を見てきただけであり、そこから何がわかるのかを見てゆかなければなりません。ここまでは単なる準備作業であり、本題はここからです。1ページあたりの容量が限界に近づいたので、ページを改めます。