オーロビル・ダム Oroville, 2006-2017

 

 2017年2月に、「全米一」の巨大ダムであるカリフォルニア州のオーロビル・ダムが決壊寸前となり、20万人近くの住民に避難指示 evacuation order がだされたというニュースが、国内でも報道されました(上は、カリフォルニア州水資源局 DWR による2017年2月15日の航空写真)。たまたま、2006年にこのオーロビル・ダムとその周辺も歩きましたので、現地の様子をみてゆくことにします。

 まず、グーグルマップの衛星写真です。

 

  カリフォルニアは、面積がほぼ日本と同じで、気候は概ね地中海性気候(Cs)です。(ただしネヴァダ州との東部境界のシエラ・ネヴァダ山脈は高山気候、ロサンジェルスのある南部の内陸部はネヴァダ州やアリゾナ州の砂漠に隣接する乾燥気候となります。)

 北カリフォルニアは、典型的な地中海性気候です。地中海性気候というと夏の高温と乾燥にばかり目が行きますが、冬は大量の降水のある雨季となります。温暖湿潤気候(Cfa)の日本とは、降水の時期が夏と冬で入れ替わっているわけです。

 訪れた2006年は雨量が多く、あちこちで洪水 flood が起きていました。3月下旬になっても曇天と降雨の日が続き、しばしば篠突く雨を体験しました。

 

 アメリカ合州国の50の州 state の州都は、必ずしもその州最大の都市や有名な都市ではなく、あまり知られていないそれ以外の中都市であることがしばしばです。

 カリフォルニア州の場合も同様で、全米第2の大都市ロサンジェルスでも、またよく知られたサンフランシスコでもなく、それらから少し離れた北カリフォルニア内陸部のサクラメントが首都になっています(地図の下方)。

 地図の上方、黄矢印がオーロビル・ダムです。ダムが決壊すれば首都の水没は不可避です。

 


 サクラメントの北方約110km、フェザー川の中流、シエラ・ネヴァダ山脈の西縁にオーロビル・ダムと人造湖オーロビル湖があります。画面左下はカリフォルニア平原の農業地帯、茶色に見えるのは、多くがゴールドラッシュ時代以降の大規模な森林破壊の跡のようです。

 中央が、高さ約230m(全米最大)、幅約1.6kmのダム本体です。本体とは別に白く直角に突き出しているのが、2017年に損傷した放水路(spillway)です。この写真ではよく見えませんが、その北西に非常用放水路(emergency spillway)が続きます。



オーロビル・ダム

 まず、オーロビル・ダムの本体・放水路・非常用放水路を見ます。

 オーロビル・ダムは、(1)治水、(2)発電、(3)水利(灌漑、都市水道)、ついでに(4)レクリエーション、を目的に掲げ、1961年に着工し、1968年に竣工しています。(竣工時のカリフォルニア州知事は、元俳優にしてのちのアメリカ合州国大統領、ロナルド・レーガンです。)

 以下、それぞれの目的に対応する諸施設をみてゆくのですが、ダム上では降車してうろつきまわるのは違法行為でもあるうえ、この2006年3月12日は、激しい降雨に見舞われたこともあり、非常用放水路の堤防などは撮影しそこなっています。

 

 木立の陰になっているフェザー・リバーを隔て、対岸のオーロビル・ダムを見上げたところです。

 右側がダムの本体で、コンクリートの遮水体をはさむように岩石を積み上げたロックダムです。高さは約230mで、全米一です。幅は約1.6kmで、全体の3分の2程度が写っています。

 その左が放水路(spillway)です。放水路頂上部のゲート基部までの水平距離は1.4km、標高差は150mです。

 

 ダム本体中央部の直下から見上げたところです。表面の岩石部分には草が茂り、土堤のように見えます。

 写真の場所から頂上部までの水平距離は1km、標高差は140mです。

 ダム本体の北西側の放水路(spillway)です。貯水池(オーロビル湖)側の8連のゲートで放水量を調節します。

 放水はコンクリートで被覆された幅約50m、水平距離約950mの水路を流下して再びフェザー・リバーとなり、サクラメント・リバーと合流して首都サクラメントを貫流し、サンフランシスコ湾に注ぎます。大量放水の際には、100km以上離れたサクラメントからも水煙がみえるようです。2017年2月7日に最初に損傷したのがこの放水路のコンクリート被覆です。

 放水路(spillway)のさらに北西側(画面では左側)が非常用放水路(emergency spillway)です。幅約280mのコンクリートの堤防(levee)が越流堤として設置され、その下が「水路」とされているのですが、コンクリートによる被覆はなく、写真のとおりなんと樹林のままです。2017年2月11日、1968年の建造以来はじめて、貯水池の水面がこの非常用放水路の堤防の高さに達し、越流水が樹林を流下しました。堤防下部の土砂を掘り崩して、堤防が崩壊寸前となったのです。

 車で堤防本体上にあがり、貯水池のオーロビル湖を右にみて、1.6km先の放水路ゲート、非常用放水路をめざします。

 この2006年は、多量の降水により、北カリフォルニア一帯では洪水 flood がおきた年でした。しかし、写真の通り、まだ湖面は最高水位からかなり低いようです。

 2017年2月上旬の、もっとも水位が上がったときの写真を見ると、この水際の露出している土砂面が狭まったように見えます。そして、損傷した放水路を保護しようとゲートを閉じたため、豪雨による水面上昇により、建造以来はじめて非常用放水路からの越流が起きたのです。

 ダム本体の頂上中央付近から下流側を見下ろすと、地下発電所の地上部分が見えます。貯水池の湖底の取水口から入った水は、地下の発電機のタービンを回したあと排出され、再びフェザー・リバーとしてサンフランシスコ湾をめざします。

 さらにダム本体上を北西側に走行して見下ろしたところです。

 画面左下がダム本体の基部に近い斜面、中央が発電所の地上部分です。

 放水路(spillway)最上部の8連ゲートです。右側(北東)が貯水池側の取水口、左側(南西)が放水路です。

 

「不法侵入・徘徊は法律により禁止されている」

 

 

 車から降りるわけにはいかないので、車の窓越しに放水路ゲートを撮影しました。

 

 ゲート脇から、南西に流下する放水路(spillway)を見下ろしたところです。

 写真では傾斜がわかりにくく上り勾配のように見えてしまいますが、緩やかな下り勾配です。さらに角度が急になる地点まで見えています。

 2006年には北カリフォルニア一帯が洪水( flood )となっていたため、放水はおこなわれていません。

 放水路(spillway)のゲートを過ぎ、さらに非常用放水路の堤防(写真なし)を、下流側の迂回路で通り過ぎた向こう側には、巨大な駐車場と公園が設置されたリクリエーション施設があります。

 東にオーロビル湖を臨んだところです。

 駐車場に併設されているボート揚げ下ろし用の斜路(boat launch)です。

 雨季で人の気配はまったくありませんが、快晴がつづく夏になると、自宅から大型四輪駆動トラックが牽引するトレーラーで運搬してきたプレジャーボートを、この斜路でトレーラーを後退させて着水させるのです。遊び終わったあとは、再びトレーラーをバックさせて湖水に下ろし、ウィンチで引き揚げて帰宅するわけです。

 この一帯は、2017年2月には増水のため水没しています。


オーロビル・ダムの周辺

 オーロビル湖に注ぐ幾多の川筋のうち、北から注ぐフェザー・リバーの本流をすこし遡ってみます。

 ゴールドラッシュについては、あらためて別ページをたてることにしますが、とりあえず、いくつかの痕跡を見てゆきます。

 

 オーロビル・ダムに注ぐ、フェザー・リバーの最大の支流(North Fork)を40km(ダムからの直線距離)ほどさかのぼった地点です。岩盤がむき出しになった峻険なV字谷が続きます。

 ここから写真の奥、下流方向のオーロビル・ダムへと戻ります。

 過去の増水時の水位標識です。

 1986年2月と、1997年1月に大きく増水したようです。

 この2006年も北カリフォルニアでは洪水 flood となりましたし、2017年にはオーロビル湖が満水になりました。ほぼ10年に一度、多雨となるようです。

 オーロビル・ダムから北に30km地点の、フェザー・リバーです。

 北方の上流方向をのぞんだところで、走ってきた州道70号線の橋脚と、下にサクラメントから北上するユニオン・パシフィック鉄道の鉄橋が見えます。

 

 車載温度計が摂氏0度を示しています。外は雪景色です。

 シエラ・ネヴァダ(sierra=「山脈」、nevada=「雪の」。スペイン語)という名のとおりです。

 オーロビル・ダムから北に約13km、ダム湖西岸の、テーブルマウンテンの北麓のチェロキー地区にある「チェロキー銀行」の廃墟です。ゴールドラッシュ時代の廃墟です。

 おそらく木造だった屋根が落ちてしまい、石を積み上げた壁だけが残っています。正面左は金庫室(vault)です。

 カリフォルニアのゴールドラッシュは、1848年2月、アメリカ・メキシコ戦争によるメキシコからの領土奪取の前月、フェザー・リバーの支流のアメリカン・リバーでの金塊や砂金の発見にはじまります。

 まもなく、写真のように、金を埋蔵する山体をウォーター・キャノン(巨大な水鉄砲)で掘り崩して金鉱石を取り出すようになりますが、ほどなくして地下数千メートルまで掘り進む地下採掘方式へと発展し、20世紀半ばまで続きます。

 チェロキー地区と南のオレゴン地区の境の小川に残る屋根付きの橋です。(プレートには"OREGON CITY"とありますが、「オレゴン」は地区の名称であり、カリフォルニア州には「オレゴン市」は存在しません。)

 映画『マディソン郡の橋』を思い出してしまいますが、この屋根は、(クリント・イーストウッドとメリル・ストリープの)記念写真とか雨宿り用なのではなく、木造の橋を雨から守るためのものです。