鬼怒川水害の真相 若宮戸 2

 14, Nov., 2015

 若宮戸における2つ目の溢水地点(24.75km) 蛇行する河川区域境界

 

 前のページ 鬼怒川水害の真相 若宮戸 1 での検討の結果あきらかになった事実は、次の通りです。〔21, Nov., 2015修正〕

 

 若宮戸(わかみやど)での氾濫は、ソーラーパネル問題のあった25.35km地点だけではなく、24.75km地点でも起きていました。この24.75km地点付近へと下流からたどってくると、鬼怒川から(架線の長さで)360mも離れて立っている紅白鉄塔の直下に向けて堤防(白線)が急に回り込み、しかもそこで突然途切れています。この少し先、すなわち24.75km地点で氾濫がおきたのでした。(氾濫が起きた後になって国交省は、その堤防の終端から鋭角に、私有地内に長さ117.5mの「土嚢の堤防もどき」を設置したのです。)

 この白線と赤線を外縁とする河川区域で採掘された砂が、東京オリンピック(前回の)景気にわく東京に持ち去られました。河川区域ですから、盗掘でもない限り、当然、河川管理者である国土交通省(当時は建設省)が許可していたに違いありません。この結果、一帯が堤防がない状態(「無堤」)のまま、上流および下流、そして対岸の堤防より低くなったのです。その状態を国土交通省は2015年9月10日まで放置していたのでした。その結果、2015年9月10日にここで大規模な氾濫がおきたのでした。

 

 

 

 広報用には低解像度写真

 

 もういちど、国土交通省関東地方整備局が、若宮戸においては25.35km地点(ソーラーパネルの場所)以外に24.75km地点でも大きな氾濫が起きていたことを事実上はじめて発表した文書、すなわち水害から1か月以上たった2015年10月13日の記者発表文書に戻りますhttp://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000633805.pdf)。さっさと先に進みたいところですが、国土交通省関東地方整備局の文書はどれもこれも(作り話の)内容が濃く(虚偽の)示唆に富んでいてその一言一句たりとも見逃すことができません。とりわけ国土交通省関東地方整備局の写は、「真実」ではなく「偽り」を写すので隅から隅まで検討することにします。

 資料16ページ左下の全景写真は、広報用にウェブサイトに載せた低解像度のものとは別のものです。「圧縮」して解像度を落とす前の元のデータという意味ではありません。たぶん同じヘリコプターの上から広報用とは別のキヤノンEOS-1Ds mark III で(もちろん別人が)撮ったものだと思います。トリミングしてあるうえ、お得意の電気紙芝居ソフト(パワポ)の画面に貼り付けた時点で極度に解像度が落ちているはずなのに、それでも広報用写真よりだいぶはっきり写っているのです。比べるとその下のようになります。カメラ雑誌のテスト記事では解像度は細い線の写り具合で評価するのですが、紅白鉄塔や家屋の写り具合がまったく違います。

 内閣官房情報調査室が、本来は「特定秘密保護法」があるから公開できないのだが今回は特別に見せてやると、恩着せがましく衛星写真の解像度を落として公表しhttp://www.cas.go.jp/jp/houdou/150911saigai.html、ほぼ同時に公表されたGoogleCrisisResponseの高解像度の衛星写真におおいに見劣りして、誰からも相手にされなかったことがありました(本 naturalright.org は謹んで拝見いたしました。➡︎鬼怒川水害の浸水範囲)。

 国土交通省も似たようなことをしているだけですが、そのことを隠した不正直さを責めるのではなく、ここは二度と撮れない写真を内緒でキチンと撮っただけ良かった(いずれ〔50年程度先に〕出てくるかもしれないのですから)、と思うことにします。

 


 

慰霊塔と紅白鉄塔の間の氾濫した地点をトリミング


こちらが広報用 地上からの鳥瞰した角度は異なりますがほぼ同じ範囲を撮影したものです。上と同じ範囲をトリミングしました

http://www.ktr.mlit.go.jp/bousai/bousai00000091.html のメニュー3番目の3つめ「静止画(鬼怒川氾濫地点空撮写真 9月10日撮影)」の中の「_W9R7710.JPG」〔2015年9月11日15時05分撮影



 

 閑話

 

 内閣官房情報調査室程度の気も使わずに、こんな大事な「特定秘密」をうっかり広報用資料に使った広報担当者(関東地方整備局の河川調査官)は、「特定秘密保護法」により刑事罰を受ける最初の国家公務員になるかもしれません。

 利根川の支流である鬼怒川がこのような状態(どこが決壊するかわからない、堤防のないところがある、など)であることは、当然敵国には決して知られてはならない弱点ですから、りっぱな「特定秘密」に違いありません。カメラの性能ではなく、堤防の性能の話です。「集団的自衛権」などと余計なお世話を焼いている場合ではありません。同盟国の心配などしている余裕はなく、まずは首都の守りをかためなければならないのです。(鬼怒川などという独立した河川は存在しません。利根川の一支流に過ぎません。鬼怒川の問題は、利根川の問題なのです。鬼怒川ひとつまともに管理できなかった国土交通省関東地方整備局にまかせておけば、いずれ必ず利根川が決壊します。)

 そうはいっても集団的自衛権の時代です。9月10日に常総市役所に救援にかけつけた陸上自衛隊の車両が、その夜、何台も水没しました。これから世界中に展開しようという自衛隊にとっては由々しき問題です。どうして国土交通大臣(当時)は防衛大臣に教えてあげなかったのでしょうか(「あそこも浸水するよ。ブン屋も来てるしマズイよ」)。政治資金あつめのパーティーなどしている場合ではなかったと思います。

 しかし、国土交通省というお役所は、此の期に及んで(鬼怒川水害後という意味です)利根川については八ッ場(やんば)ダムのことしか考えていないのですから、諦めた方がよいかもしれません。今後は、国内はもちろん外国でも、軍事行動の際には国土交通省の協力は得られないものとして、国交省外局の気象庁と国土地理院から直接情報提供を受けるようにしたうえで、作戦行動を展開する必要があるでしょう。この際、省庁再編して防衛省に移管してしまったほうがよいかもしれません。

 当面出動の可能性の高い西アジアではあまり雨の心配はしなくてもよいと思います。傘はいらないと思いますが、アスワンハイダムが(爆破されて)決壊でもすればナイルの谷とデルタが浸水する心配をしなくてはなりません。シリアは大丈夫だと思いますが、イラクやトルコ東部となるとノアの洪水の先例があるので気をつけた方がよいでしょう。南沙諸島での対中戦争になれば当然支援に行くことになるヴェトナムはとくに水害に要注意です。

 鬼怒川水害のことなどまったく気にもとめず、軍用車を水没させた前代未聞の不祥事に鈍感なまま、人間かまくらで「安保法制」を強行採決した幼児のような人たち(ヒゲの隊長ほか)は、本気で軍事行動をするつもりでいるのでしょうか

 

閑話休題

 

 

 河川区域外の損害を無視

 

 さて、本題にもどって10月13日文書ですが、誰も知らないと思ってけっこうデタラメなことを書いています。本当のことにすこしだけウソを混ぜ込むのではなく、全部ウソなのです。福島第一原子力発電所の事故に際してさえ、政府や東京電力はここまで徹底してはいませんでした。

 「いわゆる自然堤防が失われ、深掘れ(6m程度)が発生」とあり、写真を付けています。「⑤」などの丸つき数字は順番ではなく、地点を表します。手前の砂を採取した跡の凹地と、その先の凹地のあいだの狭くなったところ(道路があったようです)、水勢が強まり「落堀(おちぼり、おっぽり」を作ったのです。深さ6mもあるのだそうで、これはこれでこの「24.75km地点」の溢水の激しさを物語るものです。

 

国交省文書中の写真(2015年9月20日)

奥では「土嚢の堤防もどき」が完成しましたが、「深掘れ」にはふたたび水が溜まっています。(2015年10月26日 naturalright.org)


 しかし、ここは「河川区域」内であって、それはそれで問題ではありますが、住宅地や耕地におよぼした絶大な損害にはなんの言及もないまま、それ自体は水害とはいえない河川区域内の落堀のことだけをわざわざ書くのは不自然です。(そのいっぽうで、河川区域である菅生〔すがお〕調整地では、このたびの洪水で広大な耕地が水没しましたが、当然のこととして、浸水区域には算入されていません。鬼怒川の最下流部すなわち利根川との合流地点に設置された菅生遊水地の、すなわち谷中村を消滅させて断行された渡良瀬遊水地建設の歴史を彷彿させる、大八州〔おおやしま〕開拓地の悲惨な、しかし偉大なる歴史についても、いずれご紹介しなければなりません。

 何時頃から何時頃まで続いたのかは秘密にされているので不明ですが、地盤を6mも抉るほどの圧倒的な勢いで駆け抜けた濁流は、「十一面山」跡の凹地の範囲を超え、すぐ東側の建築物を破壊したうえで一挙に氾濫し、25.35km地点(ソーラーパネルの場所)からの氾濫(午前6時には始まっていたが、収束時刻は不明)と合流し、三坂町の越水(午前11時ころ)・決壊(午後12時50分ころ)以前に、鬼怒川東岸の常総市域の北4分の1程度を浸水させたのですが、そのことは一切書いていません。河川区域内の「深掘れ」は他に何百箇所もあるのに(国交省が無視しているものもあります)、この地点のことだけ写真付きで特筆大書しておいて、この24.75km地点が、21.0km地点(三坂町)、25.35km地点(若宮戸)につぐ、第3の氾濫地点となったことをまったく書いていないのです。

 このページの前半で写真の解像度について検討したのは、たんなる粗拾いをしたということでありません。すべてを隠蔽しようとする国土交通省関東地方整備局は、コトバによる説明をせず、存在する図面を隠し、高解像度の写真を隠すのですが、それは氾濫の事実を隠し、水害の全貌が公然周知のものとなることを回避することが目的なのです。

 

 24.75km地点の氾濫の推測 16, Nov., 2015修正〕

 河川水は、標高20.2m程度ある川側の砂丘(残丘)を越え、おそらく砂が採取されて平坦になった部分(標高17.0m。9月10日の最高水位は21.16mと推定されます。)へ、矢印のように河川水が流れ込み、ついで矢印の狭い部分(20.9m)を通り抜けて、そこに落堀(国交省文書の「深掘れ(6m程度)」)を形成して、氾濫後に国交省が長さ117.5mの「土嚢の堤防もどき」をつくる平坦な部分(16.8m)に流れ込み、最後に矢印の狭い部分(18.4m)から噴出して矢印の先端部にあった納屋を破壊して道路(18.1m)を隔てた向かいの家まで押し流し、そこから一気にひろがって氾濫したものと思われます。(以上の標高データは、国土地理院の「地理院地図 電子国土web」の航空レーザ測量によるものです測定間隔は5m四方、誤差は±0.3m、http://maps.gsi.go.jp/development/demapi.pdf〕。また、水位のY.P.値の22.0mをT.P.値に換算しました。

  

 

河川区域内の砂丘掘削を承認

 

 国交省資料にもどります。「いわゆる自然堤防が失われ」というのですが、いったいどこが「自然堤防」だというのでしょうか。「いわゆる自然堤防」論のデタラメについては、別ページで決着ずみですから再説はしませんが、河畔砂丘 Sand dune を自然堤防 Natural levee と呼ぶのは、「いわゆる」をつけようがマチガイです。25.35km地点の場合は、他の人たちの誤用をこれ幸いと利用したのですが、この24.75km地点についてはいまだかつて誰も「自然堤防」と言っていないのですから、最初からすり替えを意図した明白な虚言です。そもそも24.75km地点は、地元の人(と国交省関係者)以外は、それがどこなのか、いったい何の話なのか、まったく知らないのです。「自然堤防」と言ったのは、この10月13日の文書を新聞記者に発表した河川調査官高橋伸輔が天地創造以来最初の人間なのです。

 そのありもしない「いわゆる自然堤防」が、いったいいつ失われたというのでしょうか。「いわゆる」をつけてるんだから砂丘のことだ、とグチグチ言いそうですが、十一面山のこの地点の砂丘が掘削され、東京オリンピック(前回の)のために東京に運ばれたのは50年以上前のことであり、「深掘れ」ができたのは2015年9月10日のことです。この体言止めの短文の中に、半世紀の時間の流れが凝縮されているのです。

 

 あるいは、「いわゆる自然堤防が失われ、深掘れ(6m程度)が発生」というのは、半世紀を隔てた壮大な時の流れを感じさせる文なのではなくて、もしかして2015年9月10日早朝のほんの一瞬の出来事のことなのかもしれません。「※」をつけてページ下に、国土地理院の用語説明がつけられています。おおかた、こんな地図を出せ、あんな地図をつくってくれ、どんな資料を出せ、と調査官様にこき使われた国土地理院の職員が、おなじ国土交通省のよしみで、「高橋さん、あれは自然堤防じゃありませんよ。」と教えてくれたのでしょう。しかし、調査官様は一介の独立自営ジャーナリストの「誤報」には目くじらを立てるくせに(しかも問い合わせを受けた国交省職員が何もわからなくて即答できず、もしくはわざと答えずに嫌がらせで何日も放置したのが原因なのですが。http://bylines.news.yahoo.co.jp/masanoatsuko/20150924-00049802/、自分のマチガイには寛大なようで、マチガイは直さないまま、教えてもらった国土地理院による定義とそれが載っているURLだけをチャッカリ悪用したのでしょう。かくして、調査官様は、wikipediaでレポートを書く大学生よろしく、水がダダ漏れのネット思考を巡らし、〝よし、50年に一度の豪雨で増水して、その洪水で「自然堤防が失われ」たことにしよう〟という素晴らしい考えに到達したのです。50余年前のオリンピックが、50年に一度の豪雨に置き換えられたのです。しかし、自然堤防 Natural levee は洪水が土砂を運搬してきてできると書いてあるのに、洪水で「自然堤防が失われ」という珍奇ストーリーでは支離滅裂です。せっかく教えたのに理解してもらえず、あろうことかURLのリンクまで張られた国土地理院はさぞや迷惑しているに違いありません。

 「いわゆる」でゴマかそうが、年限を凝縮しようが、持ってくるはずのものが取って行ってしまい、大穴を空けて行ったことにしようが、甲斐なきことです。「深掘れ」は、現地のほか、国土交通省関東地方整備局の担当者の頭の中にもできているのです。

 

 実際に砂を持って行ったのはどこかの業者でしょうが、(それが国有地であれ、私有地であれ)河川区域内での砂の採取を許可したのは建設省であり、その後、この区間を堤防のない状態で50年以上放置しておいたのは建設省とその継承組織の国土交通省なのです。

 その国土交通省が水害からわずか2週間で、「土嚢の堤防もどき」を作りました。遮水シートがかぶってしまうとよくわかりませんが、下の写真のように下半分は盛り土、上半分は「土嚢の堤防もどき」というハイブリッド構造です。高さはどうやら25.35km地点につくったものの2倍はありそうです。土嚢だけの6段積みは不可能なのかもしれません。重傷者がいくらでても構わず続けられる小学校の運動会の人間ピラミッドと同じく、土嚢も段数が増えると崩れやすくなるのでしょう。

 25.35km地点に、しぶしぶいやいや作ったのが土嚢の「品の字」2段積み(後で見るとおり2014年7月3日)、案の定効果ゼロで作り直したのが3段積み(2015年9月17日)、そしてこちらは土の土手の上に3段積みです(2015年9月25日)。長さこそ117.5mと三坂町の約200m、若宮戸25.35km地点の209mの約半分ですが、高さは圧倒的です。国土交通省はこの3つについて高さを公表していませんが、この「土嚢の堤防もどき」の大きさ(高さ)は、そのまま、ここで起きた氾濫の規模を示しているのです。

 

 

 次は、国土地理院の「地理院地図 電子国土web」に掲載されている2015年9月28日撮影の航空写真です。完成3日後の「土嚢の堤防もどき」です。

 

 

 

違法行為・不法行為を容認・助長した国土交通省


  以上で24.75km地点の氾濫についての検討をいったん終わりにし、そこで確認できた事実をふまえて、25.35km地点の問題を考えてみようと思います。

 25.35km地点のソーラーパネル業者による砂丘の掘削については、はやくも水害発生翌日の9月11日には報道企業が取り上げることとなり、さいたま市の国土交通省関東地方整備局はもちろん、国土交通大臣(当時は公明党の太田昭宏)や内閣官房長官にまで取材が入り、さらには複数のテレビ局がかなり長時間の番組を流すに及んで、だんまりを決め込むわけにはいかない状況になってしまいました。

 

  こうして、9月19日に、25.35km地点のソーラーパネル問題に関して、国土交通省関東地方整備局が記者発表をおこないました。問題の施設は「河川区域」の外にあり、国土交通省としてはなんらの権限も有するものでなく、今回の氾濫については一切責任がないというものでしたhttp://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000632481.pdf)。基本的には、上の新聞記事における太田昭宏の「所有者(ソーラーパネル業者)による掘削を河川管理者(国土交通大臣)が制限することはできない」とするコトバのとおりの、それを幼児語で発話すると「国としてどうこうできるものではない」という「国交省」つまりは河川調査官高橋伸輔のコトバのとおりの、空前絶後の無責任な言い訳です。




 1ページから2ページにかけての「自然堤防」問題についてはすでに検討してありますので(➡︎自然堤防とは何か)、残るは3ページの「主な経緯」に関してです。

 結論を述べる前に、この問題に関する基本的な考え方を確認しておかなければなりません。

 砂丘を掘削したソーラーパネル業者、ならびにそれに対して必要な措置を怠った国土交通大臣については、刑法第119条の「現住建造物等侵害罪」、民法709条の「不法行為」、また河川法第29条の「河川の流水等について河川管理上支障を及ぼすおそれのある行為」ならびに第55条の「河川保全区域内における行為の制限」等にもとづき、刑事上ならびに民事上の責任の明確化をはかるべきです。

 

刑法

第百十九条 出水させて、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車又は鉱坑を浸害した者は、死刑又は無期若しくは三年以上の懲役に処する。

 

民法

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

河川法

第二十九条  第二十三条から前条までに規定するものを除くほか、河川の流水の方向、清潔、流量、幅員又は深浅等について、河川管理上支障を及ぼすおそれのある行為については、政令で、これを禁止し、若しくは制限し、又は河川管理者の許可を受けさせることができる。〔第二項以下略〕
第五十四条  河川管理者は、河岸又は河川管理施設(樹林帯を除く。第三項において同じ。)を保全するため必要があると認めるときは、河川区域(第五十八条の二第一項の規定により指定したものを除く。第三項において同じ。)に隣接する一定の区域を河川保全区域として指定することができる。〔第二項以下略〕
第五十五条  河川保全区域内において、次の各号の一に掲げる行為をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める行為については、この限りでない。
一 土地の掘さく、盛土又は切土その他土地の形状を変更する行為
二 工作物の新築又は改築 
  〔第二項以下略〕


 ソーラーパネル業者の違法行為責任・不法行為責任はあきらかであって、そのことに議論の余地はありません。今後なすべきは、それぞれの機関・団体・個人が、業者の法的責任をいかにして果たさせるかを検討し、それを実行することです。

 そのことと、河川管理者である国土交通大臣の責任問題とは、分けて考えなければなりません。違法行為・不法行為をはたらいた業者の問題と、それに対して実効ある対処行動をとらなかった河川管理者の国土交通大臣、すなわち日本国政府の責任問題とは(関連はありますが)別個の問題です。砂丘を掘削して出水させ、現住建造物等を侵害する(業者の)行為について、国土交通省が「所有者による掘削を河川管理者が制限することはできない」、「国としてどうこうできるものではない」などと述べることは、違法行為・不法行為を容認・助長したことを宣言するものです。このようなことを平気でいうような機関は治水に携わる資格がなかったというだけでなく、かれら自身もまた刑法上の違法行為ならびに民法上の不法行為の主体であったというほかなく、当然、刑事上ならびに民事上の責(せめ)を負うべきなのです。

 この本筋の議論について、今、ここで全面的に論じつくすことはできませんので、改めて検討することとします。

 ここでは、前ページ以来見てきた事実にもとづいて、9月19日文書における弁明の当否を判断することにします。

 

 

破綻した国土交通省の弁明


 2015年9月19日の弁明の趣旨は次のとおりです。

 

⑴ 国土交通省関東地方整備局(埼玉県さいたま市)は、その下部機関である下館(しもだて)河川事務所(茨城県筑西〔ちくせい〕市)において、ソーラーパネル問題に取り組んだ。何もしなかったわけではない。

⑵ 河川管理者(国土交通大臣)は、河川区域内の行為は制限できるが、河川区域外の行為については、それがたとえ氾濫の原因となる行為であっても何もできないし何もしない。だから住民からの要望は無視した(2014年3月12日、19日)。

⑶ 住民からの要望は無視したが、住民からの要望を受けた常総市役所に要望された(2014年3月28日)ので、業者(「B社」)に氾濫の原因となる行為をやめるようお願い(「強く申し入れ」)した(2014年4月10日)が、断られた。

⑷ 土嚢をおかせてくれるようお願いしたら2014年5月1日)、聞いてもらえたので、土嚢を置かせてもらった(2014年7月3日)。

 

 まったく弁明になっていません。こんなもので、なるほどそうだったのか、と納得する人はいないでしょう。どうしてこんなものが出てくるのでしょうか。その後何も起きなかったとか、洪水は押し寄せたが「品の字」積みの土嚢が絶大なる効果を発揮し氾濫は起きなかった、というのでもあれば別ですが、あれだけの大氾濫が起きた直後によくもこんなものを発表できたものだと、呆れてしまいます。

 

 河川法にもとづいて行動する限り、自分たちは何もできなかったというのが、国土交通省の言い分の前提なのですが、その前提が間違っています。国土交通大臣は、河川法にもとづく対応ができたのであり、そうする義務を負っていたのです。

 

 そもそも河川法第29条は「河川の流水の方向、清潔、流量、幅員又は深浅等について、河川管理上支障を及ぼすおそれのある行為」を全般的に禁止する権限を国土交通大臣に与えていのです。

 たとえば、河川法第54条、第55条にいう「河川保全区域」の指定権限を行使して、ソーラーパネル業者による「地の掘さく、盛土又は切土その他土地の形状を変更する行為」を許可しないことが可能であったのです。

 権限なのだから行使するもしないも大臣しだい、どうぞお好きなように、というものではありません。日本国政府は国民のプロバティー、すなわち生命 lives、自由 liberties、資産 estates を守るために設立されたのであって、その目的遂行上必要な権限を法によって与えられているのです。日本国政府は、この権限を行使して、出水の原因をつくる行為を阻止しなければならなかったのです。ところが不作為の結果、国民のプロパティーに大打撃を与えてしまったのです。

 「財産権の侵害になるので慎重な検討が必要だ」とか「国としてどうこうできるものではない」などという妄言を吐くのは、何のために国土交通省が設置されているのかを理解していないからなのです。水没させた40㎢の土地における財産権を徹底的に損なっておいて、いまさらどなたのどのような財産権をお守りするというのでしょうか。

  河川法の件は、さきに見た刑法や民法の件と同じく、のちほど論ずることにします。

 

 的検討は一時措くこととし、明白で判然とした事実にもとづき、国土交通省の弁明が妥当なものであるか否かを判断することにします。

 この弁明の中心的論点は、河川管理者は「河川区域」(河川管理区域ではなく)の外のことには法律上何の権限もないので、たとえそれが出水の原因をつくる行為であったとしてもそれをやめさせるためには何もできない、したがって何もしない、またその行為がおこなわれたあとに何らかの対応をおこなう義務もない、したがって何もしない、ということです。土嚢の「品の字」積みは市役所からの要望によるものであって、この原則を変更したものではありません。

 これは裏を返せば、「河川区域」内での行為であれば、出水の原因をつくる行為はさせないし、出水の原因が作られてしまった場合には出水を回避するための措置をとる、というものです。

 

 しかし、24.75km地点の氾濫の原因となった砂の採取は、「河川区域」内での行為だったのですが、国土交通省はそれを許可し、出水の原因がつくられたのに、堤防を設置することもせず、ハイブリッド土嚢をつくることもせず、住民に要望された常総市役所が要望してくることもなかったので土嚢の「品の字」積みもせず、そのまま放置このたびの出水を招いたのです。国土交通省は、河川区域」内(24.75km地点)であれ、「河川区域」外(25.35km地点)であれ出水の原因となる行為(砂丘の掘削)を阻止するための対処をしないし、また、出水の原因がつくられてしまった場合にも出水を回避するための対処をしなかったのです。

 

 以上のとおり25.35km地点(ソーラーパネル地点)について出水の原因となる砂丘の掘削をやめさせることができなかったのは、河川法上河川区域」外での行為を禁ずる権限を与えられていないことによるという国土交通省の弁明は法律的に見て失当であるだけでなく(権利問題)、事実としても虚偽なのです(事実問題)。