医師法違反のPCR検査拒否

 

May, 2, 2020.

 

病気になっても医者に診てもらうことが禁止され、自宅か路上で死ぬかもしれない。それが現代日本の現実です。アベノマスクのような単なる愚策とは次元の異なる、重大な刑事犯罪ともいうべき厚生労働行政方針が地方政府と全医療機関を支配し、国民の生命を直接侵害しているのです。ファシスト体質を発揮し嬉々として危機を扇動する地方政治家たちや、専門知識なき専門家委員会の素人芸人たちは、ナチズムに比肩する非人間的行政官僚とそれを支持する無能な世襲政治家集団にマニピュレートされているのです。

 

 COVID-19事件においては、厚生労働行政が当初からPCR検査を極度に制限する方針を明確に打ち出していました。それは事実上の禁止というべきものであり、医療政策においてこれほど異常な方針が定められ長期間にわたって貫徹したことは、前代未聞です。わが国の医療制度の歴史において、誤った方針が実行された例は枚挙にいとまなしではありますが、今回の場合はそもそも疾病の診断をしないという方針なのですから、その異常性は際立っています。

 次は、2020年5月2日現在の、茨城県庁のウェブサイトにおける「新型コロナウィルス感染症(対策・相談窓口等)について」(https://www.pref.ibaraki.jp/hokenfukushi/yobo/kiki/yobo/kansen/idwr/information/other/documents/corona-soudan.html)という告知内容です。早晩削除されるでしょうから、まず当該ページ(ブラウザ上で表示される一連ページ)を全部表示します(いったんpdfとして保存したものをスクリーンショットしました。pdf文書でA4版相当で6ページあります。それぞれクリックすると拡大表示され、文字を読み取ることができます)。




  まことに要領をえない冗長な記述です。今こうして読んでもゴチャゴチャしていて訳がわかりません。自分もしくは家族が、新型コロナウィルスに感染したかもしれないとか、いろいろ症状が出て苦しんでいるという切羽詰まった状況でこれを見たとすると、何が何なんだかよくわからず、どうしたらよいのかと狼狽することになるに違いありません。読み手である県民、しかも病人である者のことなどまったく考えずに、言われたことを言われたままにあとからあとから詰め込んだということなのでしょう。

 つまるところは、保健所または「帰国者・接触者相談センター」に「相談」するよう求めているようです。「相談」の方法について明記はされていませんが、どうやら直接出向くのではなく電話せよということのようです。うっかり一般の医療機関の窓口・待合室に行くことは感染の危険があるため、絶対に避けなければならないのに、そうハッキリと書くことすら怠っているのです。

 そして、電話はたいてい「話し中」となるようです。他都道府県の例では、何時間も待たされるようです。

 そしてここが肝要なのですが、電話が繋がりさえすればただちに医療機関を手配してくれるというというのではありません。

 

 

 赤字の3行が「相談」するための前提条件ということです。これも要領をえません。

 「風邪の症状や37.5℃以上の発熱が4日以上続いている」と、「強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある」とは、and ではなく or なのでしょうが、そう明記されているわけではありません。and だと読み取る可能性も大です。さらにいうと、電話の相手方の「センター」や「保健所」側が何というかはわかりません。

 それぞれ指摘されている症状も曖昧ですから、人によってはかなり重篤でも遠慮してしまい、さらに我慢を続けることもありうるでしょう。「高齢者」を具体的に何歳以上とも示していないし、「基礎疾患」については例示もありません。

 しかしそんなことは序の口です。この2条件は、電話するにあたっての条件にすぎないのです。

 次は、政治家の小池氏が自身のツイッターで紹介した、横浜市の相談窓口者用の対応判断分岐図です。(なお、小池氏とは、東京都の政治家で、3月24日ころまではコロナのことなどそっちのけで、もっぱら「東京オリンピック」を予定通り実施すると言い張ったうえで、甘い見通しのうえで1年延期に持ち込むや否や、突然、法令上不可能な「都市封鎖」の可能性を口にし、嬉々として危機感を煽りつつ有効な対策を一向にとらずにいる、件の小池氏ではありません。国会議員の小池氏です。)

 2枚あります。左が「市民相談」用、右が「医療機関からの相談」用です。

 


 

 まず、「市民」用からみます。分岐は6つあります。

 最初の分岐の「該当」とは、何に対する「該当」なのか不分明です。「相談シート」に書いてあるようです。「横浜市民以外」などかと思うと、第5分岐の条件になるのでそうではないようです。一般的な問合せなどだと、「該当あり」とされ、「訴えを傾聴」で終わるのでしょう。

 ここで「該当なし」となると、次の第2の分岐の条件への適合が問われることになります。すなわち、さきほどの2条件です。「発熱、咳などの症状」があるかどうか、ということです。これを「受診の目安」と言っていますが、実際にはこれで受診させるわけではなく、次の第3の分岐の条件判断に進むための条件なのです。

 ここで、たとえば発熱が3日だったり、倦怠感がたいしたことないと判断されると、当然「該当なし」です。「呼吸困難」に至っていなくても同様です。次の分岐条件の「COVID-19確定例との濃厚接触歴」がある者であっても、発熱3日であっていまだ呼吸困難に至っていない場合には、「COVID-19確定例との濃厚接触歴」について問われることなく、「該当なし」となります。

 その場合、「経過観察」かまたは「近隣の医療機関への受診を促す」というのです。感染初期の感染者だった場合、「経過観察」というのは、診察拒否による放置ということです。重症化するまで診断も治療もせず放置するのです。「近隣の医療機関への受診を促す」だと、そこでの医療従事者や他の受診者らへの感染の危険が生ずることになります。

 この第2の分岐の「該当する」とは、なかり症状が進行した場合ということです。そうしてはじめて、次の第3分岐条件への適合審査にすすむのですが、これが強烈です。中央部の囲みのなかに、4つの類型がありますが、いずれの場合も、さきの「受診の目安」より格段に厳しいものです。

 ①は「発熱または呼吸器症状(軽症含む)」であり、かつ、COVID-19確定例との濃厚接触歴がなければなりません。第2分岐を経ているのですから、「かつ」の前はクリアしているのですが、「かつ」以下に該当しない大半の事例は撥ねられることになります。②と③では、「37.5℃以上の発熱かつ呼吸器症状」と、第2分岐条件が or ではなく、and になったうえ、「かつ」以下に②「発症前14日以内に、COVID-19の流行地域に渡航/居住」、あるいは③「発症前14日以内に、COVID-19の流行地域に渡航/居住していたものとの濃厚接触歴」という条件が and で追加されています。②はごく一部に限られ、電話で相談する大半の人は跳ねられることになります。③は、たとえば乗り物や飲食店・職場などで「濃厚接触」があったかどうかは、わからないことのほうが多いわけで、ましてや立証など事実上不可能でしょう。無理難題を押し付けられたうえで、撥ねられることになります。④は、意味不明なのですが、どうやら当該省令で定める「疑似症」とは、医師が判断したうえでの届出るべきものについての規定を指しているようなのですが(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000593023.pdf)、医師でもない者が電話の通話で判断するようなものでは到底あり得ません。

 このいずれかに合致するのは、ごく限られた例だけです。たとえ感染していたとしても、しかも、かなりの重い症状となっていたとしても、すべて撥ねられることになります。

 このあと横浜市内在住か否かの第5分岐があり、最後にここまで来た後でさえ「帰国者・接触者が外来受診を要さない場合」という、意味不明な第6分岐があります。

 それらを全部通過して初めて、「検体採取フローに移行」するというわけです。

 

 以上みてきた、茨城県や横浜市の例は、すべて厚生労働省の指示によって実行されている仕組みです。自治体によって少々の表現や運用に違いがあるにしても、全国のほとんどの都道府県・政令指定都市・中核市において同様のことがおこなわれているようです。(ただし、一部の県で知事の判断で条件を「緩和」してPCR検査を実施した例があるようです。)

 すなわち、県民・市民から電話で問い合わせを受けた、県や市の職員が、検査の必要性の有無を判断しているわけです。それも、あきらかに必要でないものまで検査して医療機関に過大な負担をかけ、著しい濫費となるというのではありません。全く逆のことがおこなわれているのです。すなわち、感染者であっても医師の診察をうけさずに放置するのです。そうなれば当然、治療もうけることができないのであり、そのために重篤化し、場合によっては死亡するに至るのです。これは医学的にみても間違っていることは明白であり、なにもいまさら当ウェブサイトで指摘するまでもありません。ここでは、あまり指摘されることがなかった点を、指摘しておきたいと思います。すなわち、医師法違反という論点です。

 


 

 医師法第4章のうち、第17条から第20条までを引用します(https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=323AC0000000201_20160401_426AC0000000069)。

 

医師法 第四章 業務

第十七条 医師でなければ、医業をなしてはならない。

第十八条 医師でなければ、医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。

第十九条 診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。

2 診察若しくは検案をし、又は出産に立ち会つた医師は、診断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証書の交付の求があつた場合には、正当の事由がなければ、これを拒んではならない。

第二十条 医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後二十四時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。

 

 上で見た、茨城県や横浜市の例は、多少の差異はあるにしても、すべて厚生労働省の指示によって実行されている仕組みですが、県民・市民から電話で問い合わせを受けた、県や市の職員が、県民・市民に対する検査の必要性の有無を判断しているわけです。

 

「PCR検査を実施します。どこそこの医療機関に行ってください。」

あるいは、

「PCR検査は実施しません、検査や診察をする医療機関の紹介はおこないません。家で療養していてください。症状が続くか激化したら、あらためて連絡してください。」

 

と、言い渡すわけです。医師でない者が医業をなしたというほかないでしょう。まさに、県庁・市役所・保健所・相談センターが、端的に医師法第17条に違反する違法行為をおこなっているわけです。また、PCR検査を実施する判断を下してその内容の文書を作成するのですから、第19条第2項に違反する違法行為といえます。茨城県庁のように保健福祉部長が厚労省から「出向」している医師であったり、多くの保健所のように所長が医師だったりしたとしても、当該行政期間の職員が電話でこのような行為をすることが合法化されることはありません。診療報酬を受け取っていないから「医業」をなしてはいない、などという言い訳は成り立ちません。

 また、県民・市民の「診察治療の求」を拒むのですから、医師法第19条に違反する違法行為であるというほかないでしょう。個々の医師がそうするわけではないのですが、国・都道府県・市の医療制度が全体として医師法に反する行政行為をなしているわけです。厚労省が省令にもとづいて「拒んで」いるのだから、「正当な事由」がある、などという言い訳も成り立ちません。

 

 さきほどの横浜市の文書の2枚目は、「医療機関」向けのものです。ということは、医師がPCR検査が必要と判断したうえで、「相談センター」に電話してきた場合の対応方針ということです。その医師の判断、すなわち医師の診断を、行政職の市職員が判別判断する、受け入れるにしても改めて市役所として診断する、あるいは受け入れずにPCR検査不実施と診断する、というものです。おそるべき倒錯です。

 

 素人くさい法解釈だと嗤われるかもしれません。まことにごもっともです。しかし、他の場合にこんなことをしたらどうなるか考えてみましょう。心筋梗塞の発作をおこしている最中の県民・市民(の、本人はむずかしいでしょうから、家族)に対して、すぐに病院の救急外来に行ったり、あるいは救急車を呼ぶことをさせず、まずは県庁や市役所の「心疾患相談センター」に電話させ(話し中であることが多い)、そこで、(4日とは言わないにしても)前日から現在までの心身の状況を告知させ、脈拍・血圧・体温を報告させ、軽微な狭心症発作かもしれないと疑って、15分間くらい様子を見させ、ひどくなったらもう一回電話させる……、あるいは意識がある程度の不整脈であれば、明日にでもどこそこの病院に行って診てもらってください、なんだったら「救心」でも買って飲んでください、たいしたことのない症状でいちいち病院に行ったりすると、混雑するし、保険財政を圧迫して、医療崩壊をおこしますからやめてください……、等々。こういう冗談のようなことと、現に今、政府が行っていることには、何の違いもありません。

 従来、救急車からの受け入れ要請をどこも受け入れず、たらい回しの末、患者が死亡したりすれば、しばしば新聞紙面に取り上げられたのです。しかし、COVID-19事例にあっては簡易なPCR検査すら、行政機関やその指示をうけた医療機関があれこれの理由を構成してことわっているのです。しかも、全国的に大規模かつ継続的に強行しているのです。

 

 

(資料)

 下は、茨城県庁が公表している「電話相談件数」です。(「水戸市」行は、4月以降「中核市」となり独自の「水戸市保健所」が設置されたのでそれに係る数値であり、それ以前は「0」ではなく本来空欄とすべきものでしょう。)

 「相談」の内容、とくにどれだけが感染疑いの訴えだったのか、ならびにその後の措置、とりわけPCR検査、ないし自宅待機への振り分け等についての説明はないので、一切わかりません。